ファイルのネーミング・ルール
ファイル管理形態の違いはファイルの名称の違いに起因するところも大きい。ファイルの名前を付けるルールを「ネーミング・ルール(Naming Rule)」と言うが、例えばホスト系のサーバーでは44文字のまでのファイル名(データセット名)を提供でき、かつ、修飾子を多数つけることができる。例えば以下のように修飾子を多数利用して名称に特徴をつけることができる。
SANO.MASAKAZU.MASTER.DATA.NUM100
上記例では左から第一修飾子、第二修飾子、第三修飾子、第四修飾子、第五修飾子などと呼ぶ。DFSMSと呼ばれるIBMのストレージ管理システムではこのようなファイル名や修飾子の特徴を利用して、ファイルの分類や各種サービス・クラスの割り当てを行なったりすることができる。
これに対してWindowsやUNIXのファイルの名は最終修飾子を1つしか利用できず、かつ、修飾子自体にも特別な意味を与えているため、ファイル名の制限が意外と大きい。
World.bmp (ビットマップのファイル)
World.com (実行可能なプログラムのファイル)
World.123 (Lotus 123で利用されるファイル)
ファイル名の前半部分(ピリオドより前の部分)は拡張されており、パソコン用OSである初期のDOS(ドス:Disk Operating System)では8文字までしか利用できなかったが、現在ではロングファイル名が使えるようになっており255文字まで利用できる。しかしピリオドより後の修飾子は1つであるという制限は今でも残っており、かつ目的に応じて利用用途が決まっているものも多い。修飾子はファイル名を示すというよりも、どの適用業務で利用できるかを示している情報となっている。
ホスト系サーバーでは名称によって利用できる適用業務プログラムが制限されるということはない。修飾子の数も文字数制限内であれば任意に選べ、比較的自由にファイル名称を設定できる。
ホスト系サーバーにはカタログと呼ばれる機能が装備されており、自分がアクセスできるディスクであれば、どのディスクにファイルが入っていたとしても、そのファイルをファイル名で容易に検索することができる。
例えば前述の例でみると、「SANOで始まるファイルの一覧を出す」という操作を行なうと、複数のディスクにバラバラに入っているSANOで始まるファイルを全てリストすることができる。また、カタログを利用していれば、あるボリュームから別のボリュームへファイルを移動させてもファイルが見つからなくなる事はなく運用上困ることはない。これはWindowsやUNIXで使われている一般的なディレクトリ構造のファイルシステムでは実現困難な機能の1つとなっている。
ホスト系サーバーでカタログを利用した運用を行なう場合、同じ名前のファイルが複数存在すると、ディレクトリなどで分類などができない分、同姓同名のファイルを区別することが運用上困難となる。従って便利なカタログ機能を利用するためには、同姓同名のファイルは存在してはいけないという事になる。これはある意味運用上の制約事項になっている。
カタログを使わずにボリューム名(ディスク名)を指定してファイルをアクセスする方法を採用すれば、ホスト系サーバー環境でも同名ファイルを存在させた状態での運用が可能となるが、ユーザーとしても同姓同名のファイルが存在すると、どちらが本物でどちらが重要なのかが判らなくなってしまう不便さがあるため、ホスト系サーバー環境では同姓同名のファイルの存在を否定する運用が広くユーザーに受け入れられている。