次々に企業が導入を発表
一方で、2008年のiPhoneの日本発売後に、コンサルティングファームのベリングポイント(現プライスウォーターハウスクーパースジャパン)が1,000台を社員に配布し、2010年のiPad発売直後に大塚製薬がMR(医療情報担当者)向けに1,300台を導入すると発表し、その後も大企業が続々と導入を発表している。
法人向けの事業者のみならず、アウディジャパン、プジョー・シトロエン・ジャポンといったカーディーラー、みずほ銀行にニューヨーカーといったアパレル企業も導入を始めた。また、最近では「メガネの三城」「パリミキ」などを展開する三城ホールディングスが、国内1,000店舗に導入した。店舗サービスの一環として、顔写真やイラストとフレームの画像をあわせて仮想的にめがねを試着できるアプリケーションを開発し、これをiPadで見せることで販売促進に繋げる施策だ。
スマートフォンを持った保険営業マンも増えたし、電車に乗っていてもスマートフォンを持った人を見ない日はないのではないだろうか。しかし、誰かが持っているから、他社が導入したから、というのではなく、そもそも本当にスマートフォンは自社のビジネスに必要なのだろうか、有効なのだろうか、といった目で見直すことが必要になってきている。
個人と企業では、用途も必要性も違う
ご存じの通り、あれだけ行列を作ってiPhoneやiPadを購入した人たちも、Yahoo!オークションなどでどんどん売りに出している。もちろん個人ユーザーがほとんどだが、自分が何のためにほしいのか、といったことを考えずに購入した人たちが、結局活用できずに売りに出していることは容易に想像できる。
スマートフォンが流行っているから、という理由は個人で購入する動機としては構わないが、企業が導入する場合には、そういった流行りに踊らされず、自社のビジネスのあり方を見直す機会と考え、具体的な利用シーンを考える必要がある。当然投資対象になるのだから、投資対効果(ROI)を検討し、どこで売上、利益に貢献し、あるいはどこでコスト削減に寄与するのか、といったことを十分に検討した上で導入すべきなのだ。
こんなことは私が言うまでもないことであるはずだが、実際には鶴の一声で導入し、既にうまく活用し切れていない、というご相談をいただくことが多い。当社に相談をいただく企業は、見直そうという姿勢があるから今からでも間に合うが、世間にはそのiPadが除法システム部門の片隅に山積みされている例も少なくない。
費用対効果を考える
当社が支援させていただいている企業では、導入に際して厳しい投資対効果を調査していただいている。
- 誰がiPadを使うのか
- どこでiPadを使うのか(場所、場面)
- どのように使うのか、そのためのアプリケーションはどういうものか
- 現在はどうしているのか
- iPad導入により、どういう効果が出るのか
- その効果は、投資に見合うものなのか
ビジネスで利用する以上、投資に見合う効果でなくてはならない。iPadを導入することで、売上が上がるのか、あるいはコストが下がるのか、といったことを綿密に確認し、審議した上で導入に至っている。本当にiPadがいいのか、あるいはAndroid端末のほうがいいのか、あるいはiPhonenのほうが効果があるのか、それともPCであるべきなのか、と多面的に調査し、検討した上で導入しているということだ。
通信回線の必要性
スマートフォンは、「フォン」と言うからには電話であり、携帯電話網を利用するものだ。しかし、iPadのように携帯電話網を利用しながらも、電話で話をすることを目的としないし、そういう機能を持たない端末もある。また、最近のタブレット端末の中には、元々通信回線を使わずに、Wi-Fi(無線LAN)だけの端末もある。そう考えてみると、通信回線を当たり前と思わないほうが良いのかも知れない。元々社内だけで利用する目的であれば、社内のWi-Fiを利用する方法もあるし、社外に持ち出すとしても、マクドナルドやスターバックスのようにWi-Fiを完備しているカフェやファミリーレストランも増えてきている。
当社でiPadのキッティングをお手伝いした学校法人では、教室内にWi-Fi環境を持っているため、Wi-FiだけのiPadを導入することに決定した。
利用シーンを考えずに、無闇に携帯電話網を利用するモデルを購入してしまい、それを全社員に配布するなどといったことになると、その通信費だけで馬鹿にならないコストになってしまう。月額の出費は小さくても、トータルコストで考えるとWi-Fiモデルを選択するという方法もあるということだ。