数あるデータベースソリューションの中でも、Microsoft SQL Serverほど使いやすさにこだわっているプロダクトは少ないのではないだろうか。業務ユーザ、開発者、そして管理者のどの立場からも、その操作性の良さを絶賛する声は多い。そのためか、SQL Serverは技術指向色の強いOracleなどと比較して「初心者向けのRDBMS」というイメージをもたれがちだ。
だがSQL Serverの魅力は単なるeasy-to-useな使い心地にとどまらない。使いやすさを維持しながらも、時代に必要とされるさまざまな機能をバージョンアップのたびに提供し続けてきたからこそ、エンタープライズ市場で高い評価を得るに至っているのだ。
クラウド連携とセルフBI機能を搭載したSQL Server 2008 R2
まず、現状についておさらいしてみよう。SQL Serverの現バージョンは「Microsoft SQL Server 2008 R2」、日本では1年前の2010年5月にリリースされている。SQL Server 2008 R2はSQL Serverロードマップでいうところの"第3世代"に位置づけられる。
「SQL Serverのこれまでの進化は3つの世代に分けることができます。まず、Sybaseから購入したSybase SQL Server 4.2をWindows NTに移植し、インターネットサポートやレプリケーション搭載を実現したSQL Server 6.5までが第1世代にあたります。次に90%以上のコードを書き換え、セキュリティ機能の充実を図ったSQL Server 7.0、SQL Server 2000までが第2世代、そして、より大規模な環境での適応や大規模なデータの扱いを重視し、同時にTCO削減というビジネス上の課題にも対応することを求められたのがSQL Server 2005からSQL Server 2008、そして現バージョンにつながる第3世代です」(多田氏)
現バージョンのSQL Server 2008 R2は、バージョン名だけを聞くと2008の修正版(revision)のようにも思えるが、「2008から追加された機能から見てもメジャーバージョンアップと言って差し支えない」(多田氏)出来だという。その数ある機能強化の中でも特徴的なのがクラウド(SQL Azure)への対応とセルフサービスBI(PowerPivot)の提供だろう。オンプレミスとクラウドのシームレスな展開を可能にしたこと、そして世界中のビジネスユーザが使っているExcelをユーザインタフェースにしながら高度なデータ分析を実現したことが強みとなり、SQL Serverは他社製品との大きな差別化を果たしている。
SQL Server 2008 R2に関してもうひとつ付け加えるならば、今年3月に日本ヒューレット・パッカードと共同で発表したデータウェアハウス専用アプライアンス「HP Enterprise Data Warehouse Appliance」とBI機能に特化したアプライアンス「HP Business Decision Appliance」が記憶に新しい。いずれもHPのハードウェア上に、それぞれの用途に最適化したSQL Server 2008 R2を搭載したものだ。
ビッグデータ時代と呼ばれる現代においては、これまで大企業専用と思われがちだったデータウェアハウジングやBIの需要が爆発的に伸びている。そのニーズを見込んでの製品リリースだったが「お客様の反響は非常に大きい」(多田氏)という。TCO削減と経営のスピードアップをSQL Serverアプライアンスで実現する - 時代のニーズを読んだユニークな製品リリースだと言えるだろう。