必要な時、ITリソースを柔軟に利用できるようにするクラウドと、どこからでも情報や機能へのアクセスを可能とするスマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスの組み合わせは、我々の生活やビジネスを大きく変える可能性を秘めている。その一方、特にスマートデバイスのビジネス分野での普及に欠かせないセキュリティ管理については、ようやく整備が始まった段階だ。その現状を整理し、今後に向けての課題を考察したい。
IT革命はスマートデバイスとクラウドの組み合わせで成就する
2005 年に没したピーター・ドラッカーは、2000 年頃「現在のIT革命はその前半段階であり、本質に到達しているとは言えない」と分析していた。彼が比較対象にした産業革命では、蒸気機関が発明され工業生産により、ものを大量に作れるようになったのが革命の前半とある。一方、革命の本質は、その後、鉄道が発明され、人が容易に移動できるようになってようやく迎えたとある。当時ドラッカーは「eコマースがIT 革命の本質かもしれない」と語っていたが、もし存命なら、内外のIT リソースをどこからでも柔軟に利用可能にするスマートデバイスとクラウドの組み合わせが、産業革命における鉄道の役割と見るのかもしれない。
例えば現在、個人も含めてスマートフォンに移行している理由には便利さもあるが、費用対効果も大きい。通話だけでなく、様々な機能の利用を考えると、ガラパゴス携帯より、スマートフォンの方が安く早く実現できる。スマートフォンは、テクノロジー的には携帯電話というより、むしろパソコンだといえる。高機能電話という言葉が誤解を招いているが、電話がついている小さなパソコンだと考えた方が間違いない。
その一方、企業がスマートデバイスを導入する際、「何らかの管理をしないと使えない」という「空気」がある。その要因の一つとして挙げられるのが、個人情報保護法だ。実は同法は個人情報の適切な取得と利用を求める法律であり、流出を罰することを目的にはしていない。基本的な管理をしているのにも関わらず、それを乗り越えて盗まれた場合、罪になるのは盗んだ側である。ところが今は「盗られたこと自体が悪い」と全てがくくられてしまう風潮がある。そういう中で、個人情報の塊とも言えるスマートデバイスを企業が導入するにおいては、非常にセンシティブにならざるを得ないのも事実だ。
最近、MDM(モバイル・デバイス・マネジメント)と呼ばれる、スマートデバイスを管理するソリューションが各社よりリリースされ、注目されている。特にビジネスユースでスマートデバイスを普及させるためには、このMDMが非常に重要になる。(次ページへ続く)
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西本逸郎(ニシモト イツロウ)
株式会社ラック 取締役 常務執行役員 最高技術責任者。
昭和33年福岡県北九州市生まれ、熊本大学工学部土木工学科中退。昭和61年
株式会社ラック入社。当初は通信系ソフトウェアやミドルウェアの開発に従事。
1993年シーメンスニックスドルフ社と提携、オープンPOS(WindowsPOS)...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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