ハイエンドからエントリーまですべてをカバー
― 先般の東日本大震災以降、BCPや災害対策の見直しを進める企業が増えていますが、富士通でもそれに関連した問い合わせは増えているのでしょうか?
増えていますね。ストレージ単体というよりは、災害対策ソリューション全体として、様々な企業から相談を受けています。中には、災害対策サイトを置いているデータセンターを、もっと遠隔地の、異なる電力会社の管轄内に移したいといった要望もあります。これまでも、通信キャリアや銀行のミッションクリティカルなシステムでは高度な災害対策が施されてきましたが、震災後はそういった領域以外のミドルレンジのシステムでも、本格的な災害対策のニーズが高まっています。また、自治体やその外郭団体などが個別に運用していたシステムを、幾つか束ねてデータセンターに置いた上で、災害対策ソリューションを適用するといったようなニーズもあります。
― データの保護という観点では、ストレージ装置のリモートコピー機能を使ったソリューションのほかにも、サーバー上のソフトウェアの機能を使って安価に災害対策を実現しようというソリューションもあります。
この2つのどちらが有利かという議論は1990年代からずっと行われていて、ベンダーによって主張が多少異なります。ちなみに富士通では、当時からずっとストレージ装置のリモートコピーによるソリューションを推しています。大規模でミッションクリティカルなシステムの場合、大容量のストレージを多数のサーバーで共用することになりますから、サーバーでデータコピーを行う方式だとサーバー1台1台を個別に管理する必要があります。一方、ストレージのコピー機能を使う場合は、ストレージだけを見ていればいいので、管理がはるかに簡単なのです。
― 管理作業の負荷を軽減するための自動化機能も、昨今のストレージ製品のトレンドですね。
そういう意味では、我々のSANストレージ製品「ETERNUS DXシリーズ」の最新版では、データ階層化やシン・プロビジョニングなどの自動化機能をすべて備えています。我々の製品の大きな強みは、これらの機能がハイエンド製品だけでなく、ミドルレンジやエントリー製品にまですべてに備わっている点です。また、リモートデータコピーの機能もすべてのクラスに搭載しています。先ほど災害対策の話でも述べましたが、最近ではミッションクリティカル領域だけでなく、中小規模のシステムでもSAN ストレージ製品のニーズが高まっています。そのため、弊社だけでなく米国のストレージベンダーも、ミドルレンジ/エントリー製品の機能拡充に力を入れているのが近年のトレンドです。
ただ、米国のストレージベンダーは買収でポートフォリオを拡張してきたため、ハイエンド向け製品とエントリー向け製品では運用方法がまったく異なることが多いのも事実です。その点、我々の製品はすべてが同じ管理ソフトウェアを搭載しているため、例えばデータセンターのように異なる機種が混在する環境でも、同じ操作ですべてを効率的に管理することができます。
ストレージ事業のグローバル展開をより加速させていく
― 今後、富士通のストレージ事業をどのような戦略の下に牽引していこうとお考えでしょうか?
1つにはソリューションの拡充、そしてもう1つがグローバル展開です。特にグローバル展開は我々にとって大きなチャレンジですが、ETERNUSシリーズは既に世界71カ国に導入されており、SANのエントリー製品に限って言えば、2010年度の海外市場での売上は国内市場の1.6倍を記録しています。今後も、海外市場での売上比率は高くなっていくと思いますが、特に先ほど紹介したFTSがカバーする地域と中国では大きな伸びを見込んでいます。
― グローバル市場では、海外ベンダーも交えて熾烈な競争が繰り広げられていますが、これを勝ち抜いていくためにどのような戦略をお考えでしょうか?
FTSは広大な地域に強力な販売チャネルを持っていますから、これを存分に生かしてストレージ製品のシェアを伸ばしていきたいと考えています。一方中国は、日本や欧米とはビジネス環境が異なりますから、現地の大手パートナー企業と手を組むことでビジネスを拡大していく予定です。幸い、パートナー企業からは、ハイエンドからローエンドまですべてを提供できるという我々のビジネスバリューを高く評価していただいています。また、この分野で最も進んでいるのはやはり米国なので、我々も米国での厳しい競争の中である程度のビジネスをやっていかないと、トレンドに迅速にキャッチアップできないだろうと考えています。
ちなみに製品そのものに関しては、少なくともハードウェアに関しては他社製品と比べて信頼性や性能で負ける気はしていません。後は、ソフトウェアも含めたソリューション全体としての使いやすさや運用管理の効率性です。この部分に関しては、去年まではアピールの仕方も含めて正直弱い部分があったので、今年は特にここに注力して改善するつもりです。