2011年10月19日から21日までの3日間、インサイトテクノロジー主催によるデータベース技術者向けのイベント「INSIGHT OUT 2011」が開催される。インサイトテクノロジーといえば、Oracle Database関連の製品やコンサルティングサービスで知られる企業だが、同イベントは特定のデータベース製品にとらわれることなく、さまざまな製品の最新テクノロジーや高度なノウハウを、それぞれの分野のトップエンジニアが披露する場として設けられた。
Oracle Databaseはもちろんのこと、SQL Server、MySQL、PostgreSQL、HiRDBなど、実に多種多様なデータベース製品のエキスパートが講師として、国内はもとより海外からも多数招かれており、主催者のインサイトテクノロジーでは同イベントを国内外のデータベース技術者の交流の場となることも期待しているという。
ちなみに同イベントでは、約40本ものコアなセッションが開催される予定だが、そのうちの12本はSQL Server関連のもので占められている。その内容も、初中級者向けのチューニングTipsから、上級者向けにSQL Serverの内部の仕組みを解説するディープなものまで、実にバラエティに富んでいる。また、SQL Serverの次期バージョンである「SQL Server Denali」で実現される新機能の紹介も幾つか行われる予定だという。
これらの中から、特に見どころになりそうな点について、同イベントで講師を務める日本マイクロソフト SQL Server カスタマーアドバイザリーチーム プリンシパルプログラムマネージャー 多田典史氏に話を聞いた。
日本人唯一の“SQLCAT”である多田氏が紹介するSQL Server Denaliの新機能
多田氏は、全世界で25人しかメンバーがいないSQL Serverの精鋭スペシャリストチーム「SQL CAT(SQL Server Customer Advisory Team)」に所属する唯一の日本人である。これまで、数多くのミッションクリティカルプロジェクトでSQL Serverの導入・運用支援に当たってきた同氏は、そこで培われてきた数々のノウハウを本イベントの2つのセッションの中で披露する。
1つ目が、イベント初日に行われるセッション「SQL Server におけるデータベース設計手法─着目すべきポイントを簡単に!!」だ。このセッションの趣旨について、多田氏は次のように説明する。
「SQL Serverは導入が簡単で、インストールするとすぐに動いてしまうので、データベースの専門家でなくても何となく扱えてしまいます。でもそのことが逆に、データベース設計をおろそかにしてしまう原因にもなってしまうんです。特に中規模以下のプロジェクトでは、アプリケーション開発の担当者がそのままSQL Serverのデータベースも一緒に担当してしまうケースが昔から多いものですから」
その結果、データベースの設計が十分に練られないままシステムが構築され、後々大きなトラブルに発展するというパターンが非常に多いという。そこでこのセッションでは、こうした事態を招かないよう、SQL Serverのデータベース設計時に最低限抑えなければいけない重要なポイントを何点かピックアップして、詳しく解説する予定だという。
そして、同氏が担当するもう1つのセッションが、3日目に行われる「SQL Server で高可用性を実現するためには─AlwaysOn」だ。「AlwaysOn」とは、SQL Serverの次期バージョン「SQL Server Denali」に実装される新機能で、SQL Serverの可用性を高めるための新たな仕組みである。
「SQL Server 2008までは、フェイルオーバークラスタとデータベースミラーリングの機能がそれぞれ完全に独立していたので、この両方を組み合わせて運用するにはコツが必要でした。それがSQL Server Denaliになると、AlwaysOnという新たな仕組みにより、この両方を一括して管理・運用できるようになります。これは非常に大きな進化で、個人的にはSQL Server Denaliの新機能の中で最も重要なものだと思っています」(多田氏)
同セッションではこのAlwaysOnを中心に、SQL Server Denaliで強化された可用性機能について、SQL Server 2008との比較を交えながら詳しく解説する予定だという。