行政指導、役員報酬の減給、苦難の続くドコモ
2012年1月25日、国内最大の顧客を持つNTTドコモが東京都を中心に252万人のユーザーに対してサービス中断というトラブルを起こした。
ご存知の通り、ドコモの通信障害は今回が初めてではない。ここ最近トラブル続きとなっている。ついに2012年1月26日、頻発するドコモの通信障害に対して総務省が行政指導を行った。この行政指導を受けた翌日にも、東北地方で通信障害が起きている。
スマートデバイスの活況の裏で、悲鳴をあげるインフラ
この一連の障害と、総務省の行政指導、ユーザーの信頼回復を目的として、NTTドコモは以下の対策案を提示した。
・2014年度までに500億円の追加設備投資の実施
2014年度までにドコモでは1140億円の設備増強を予定していたが、これに500億円を追加投資し、合計1640億円で設備増強を行う。これにより、 スマートフォン5000万台に耐えられるインフラを構築する。
・山田隆持社長ら六人の役員報酬の減額
山田社長が20%、辻村清行副社長ら五人は10%の減額幅で、三ヶ月間にわたり役員報酬をカットする。
・グーグルへの打診
スマートフォンの発生させるトラフィックの負荷増大の原因の一つに、Androidに組み込まれている、自動通信機能がある。ドコモによればAndroidは28分に1回の割合で、ユーザーが何の操作もしていなくても、定期的に通信を発生している。これが標準の状態で、ユーザーが個別にアプリケーションをインストールしている場合には、各々のアプリケーションからも自動通信が行われるため、トラフィック増大に繋がっているという。
ドコモは世界の通信会社と協調し、アプリ開発者へも通信頻度の抑制を呼びかけていく考えだ。
ドコモだけの問題ではなく、キャリア共通の問題
一連の障害発生でドコモだけが苦しんでいるように見えるが、他のキャリアも「苦しい」状況は同じだ。スマートフォンはARPU上昇の武器ではあるが、総務省移動通信課の調査によればフィーチャーホンと比較したトラフィックは24倍にもなるという。スマートフォンも含めた全国のモバイルトラフィックは毎年二倍増加する。都心部ではこれが更に増え、毎年3.4倍も増加するのだ。
急増するスマートデバイスのトラフィック対策だけでも大変だが、現在のモバイル・キャリアは大きく分けて以下四点の課題に直面している。
一つひとつの課題を解決することは容易ではないが、これらの課題をクリアすることで、モバイルの世界は次のステージへ駒を進めることになる。一連の障害発生は、まるで次の時代に移行するための「モバイル・グランズウェル(潮流)」だと筆者は感じる。
今回は、この「モバイル・グランズウェル」の先に、何が待ち受けているのかを考察してみたい。