経営層がビッグデータに関心を持てば情シスのチャンス
鈴木: ビッグデータ活用においては、集積したデータから知見を得る、ということが非常に重要なポイントになります。しかし一方で、いくらデータを集めても「ゴミデータはしょせんゴミでしかない」という意見もあります。一般企業がデータ活用に踏み出そうとしたとき、まずはどのあたりから手をつければよいのでしょうか。
山口: ビッグデータは何が重要なのか、それはいかに分析するかよりも、おっしゃるように集積したデータからいかに知見を導き出すか、です。そのためには大量のゴミの山から宝を見つけ出すような作業を要します。冒頭でも申し上げましたが、ビッグデータはこれまでのITの常識では通用しないことが多く、お客様だけでなく我々ベンダにとっても未知数の分野です。ビッグデータをどう活用していくのか、我々もお客様とともに考えていかなくてはならない。そのための足がかりとして、データを捨てずにまずは溜めておくことから始めていただければと思います。
鈴木: では、ビッグデータ活用における最大の障壁としてはどういった課題が挙げられるでしょうか。
山口: ビッグデータを活用してやりたいことは漠然としていても、それを数学的分析の理論に当てはめるのが非常に難しいことですね。どんなアルゴリズムを使えば効率的に分析できるのか、そういったモデルの確立が厄介なことが最大のネックです。いまなら数理統計学とプログラミングができる技術者なら、高待遇で迎えられるのではないでしょうか。
もうひとつ、今後も課題として残るのがプライバシーの問題です。ビッグデータ分析はともすると消費者をより深く知る行為と直結します。個人情報の特定が可能なほどに消費者の顔が見える化されるわけです。これは一歩間違えると重大なプライバシー違反につながりかねません。こういった問題を避けるため、情報提供側は消費者から気持ち悪がられないようにデータを取得することを意識する必要があります。たとえば、加工する前にデータをマスキングして必要以上の個人情報を取れないようにする、個人情報そのものを暗号化する、などの方策が考えられるでしょう。
鈴木: お話を伺っていて、確実にビッグデータは活用の時代に入ったと実感します。だからこそ、個人的にはこのままビッグデータがバズワードとして扱われるのは不本意に感じる部分もあります。しかしこのブームが続けば、逆に経営層がビッグデータに興味を示す可能性も高くなるような気もします。もしそうなったとき、情シス部門でも業務部門でも、以前からやりたいと思っていたデータ活用ビジネスがあれば、その機会に話を持ち出すチャンスかもしれません。
山口: 国内企業でもCIOレベルであれば、ビッグデータというトレンドはかなり浸透してきたと思います。繰り返しになりますが、まずは、いままでは捨てていたようなデータや、TwitterやFacebookなど外に落ちているデータを拾うことから始めてほしいですね。このデータを蓄積するというところですでに挫折している例が多いようなので、残念に思います。日立だけでなく、ベンダはビッグデータビジネスに関するさまざまな知見をもっているので、ぜひとも気軽に相談してください。