ビッグデータの高速処理技術
山口: データの高速検索や効率的な補完を可能にする蓄積/検索の技術としては、東京大学と共同で 超高速データベースエンジンの研究開発を行っており、従来型のデータベースエンジン比で約800倍の処理性能をめざすニュースリリースを2011年の6月に配信しました。今後、実証実験を経て、研究開発成果を反映した新しいデータベースソフトウェアの開発をすすめ、2012年度には事業化することを目指しています。
そして大量の情報を対象とした集計/分析では、バッチ処理を複数サーバで分散実行する処理基盤、さらには既存のCOBOLのバッチでも活用できるようなミッションクリティカルな基盤が求められます。リアルタイム監視と同様に、日立はここでもミドルウェア製品「uCosminexus Grid Processing Server」を提供しています。
鈴木: そうしたソリューションの活用も含め、日立が展開してきたビッグデータビジネスの具体的な事例にはどんなものがあるでしょうか。
ガスタービン保全、交通状況モニタリングなどのリアルタイム処理技術
山口: 2つほどご紹介しましょう。
ひとつは「ガスタービン保全システム」です。日立は世界中にガスタービンを納入していますが、これらのタービンが発信する情報を衛星通信を使って毎日収集しており、その量は1日あたり20GBになります。取得するデータの種類は圧力、回転数、温度などさまざまですが、これをインメモリでストリーム処理しています。もし異常な挙動を検出した場合は、直近データの変動パターンと比較し、「まだ大丈夫」「そろそろ部品を交換したほうがいい」などの分析をリアルタイムで行っています。世界中のガスタービンの保守をこのようにデータ分析しながら行っているわけです。
もうひとつは「交通状況モニタリング」です。これは自動車の車両位置情報を分析して速度や走行方向を算出し、これらのデータをストリーム処理(約2,000件/秒)して渋滞を検出します。GPSデータと連携することで、リアルタイムで渋滞や事故などの状況を可視化して把握することが可能になります。
鈴木: そういった事例で培ってきたデータ活用技術を一般企業に適用するとしたら、どんな例が考えられるでしょうか。
山口: 日立のリアルタイム処理技術は、証券アルゴリズム取引に向けた技術として進展してきたので、監視系業務などには広く応用できると思います。たとえばITシステムの運用監視などに向いているのではないでしょうか。マシンルームの温度や稼働状況をリアルタイムに可視化するなどに力を発揮できます。そのほか、小売業などではPOSデータを売上の集計に使っているところは多いですが、これを在庫管理システムにも応用するなど、さまざまな使い方が考えられます。