技術スキルだけでなくコミュニケーションスキルも大事
無事にGoldを取得し、配属されたのはOracle Database製品のサポートセンターだった。そこは問い合わせ件数も多く、次から次へと、調査や検証をこなさなければならなかった。さらに、サポートという立場上、「分かりませんとは言えない厳しい状況がありました」とのこと。とにかく、問い合わせはなんらかの形で回答しなければならない。Goldを取ったとはいえ、技術面で追いついていくのは大変で苦労は多かった。ただ、職場環境には恵まれていた。サポートセンターに蓄積されている過去事例なども含め、情報は豊富、さらに技術力の高い先輩社員が助けてくれる環境だったのだ。
一方で、精神的にはつらい面もあった。
「実は、電話が怖かったんです。最初のうちは、経験豊富なお客様から電話口で質問をされた場合に、納得のいく答えができるだろうかと、ビクビクしていました。上司に弱音を吐いたこともありました」(上野さん)
上司は「もう少し頑張れば確実に技術力が身につくから、焦らずに踏ん張ろう」とはげましてくれたという。
しばらくして、別のサポートセンターへ異動となった。まだ電話への苦手意識が払拭されていなかったにもかかわらず、そこでの業務は基本がなんと電話応対。しかしながら、この新たな職場が上野さんの意識を変え、成長のきっかけにもなる。というのも、これまでは「Oracle Database製品に関する情報提供」に注力していたが、新たなチームで求められたのは「システムを通じた真の問題解決」だったのだ。
「単に、お客様からの質問に回答するのではなく、質問の奥にある真の課題を解決しなさいと言われました」(上野さん)
データベースだけでなく、サーバーも含めたシステムのトータルサポートが求められたのだ。当然ながら、自らの技術スキルをさらに向上させる必要があった。そして、自分のスキルだけでは到底追いつかないので、自然と他のエンジニアとコミュニケーションをとるようにもなる。
顧客の真の課題を解決するには、顧客とのコミュニケーションが不可欠だ。これができなければ、顧客の真の課題も分からない。幸いにして新たなチームには、コミュニケーションスキル向上のためのトレーニングコースなどもあった。そのような周囲の助けもあり、上野さんのスキルは確実に向上し、次第に顧客の真の課題解決にも、貢献できるようになっていく。
「自分がお客様の問題解決に役立てたな、と感じられることが一番のやりがいです。決して楽ではありませんが、充実感が辛さを帳消しにしてくれるのかもしれません。電話はいまだに得意ではありませんが、怖いとは思わなくなりました」(上野さん)
青木さんの後押しでPlatinumを取得、とはいえ態度はあくまでも謙虚
入社から2年弱が経過した頃、上野さんはORACLE MASTER Platinum Oracle Database 10gの資格試験に合格する。日頃の業務だけでは、Platinumの試験範囲はカバーしきれない。Platinumに対するあこがれはあったが、「とてもじゃないけれど、自分のスキルでは挑戦できないと思っていました」とのこと。そんな上野さんの背中を押したのが、以前「DBプロに会いたい」に登場した青木さんだった。
青木さんは、当時、コーソルに在籍し、すでにPlatinumを取得していた。そして、Platinum仲間を増やすべく、周囲に試験対策法の伝授など積極的な活動をしていたのだ。その青木さんが「Platinumを受けるのなら、家に仮想環境を作って、RACを入れたらいいよ」などとアドバイスをくれた。さらには、コーソルのサービス(設計・構築)チームに話をつけ、上野さんが休日に試験対策ができるよう、検証環境も手配してくれた。その上、休日返上で実機を使ったトレーニングにも付き合ってくれたのだ。
「青木さんにここまでしてもらったら、必ず受からなければと思いました」と上野さん。コーソルには有用な情報も多かったし、勉強も一生懸命行った。結果、Platinumにも一発で合格。
「試験当日はいっぱいいっぱいでした。これができなかった、あれもできなかったと思い返してしまい、結果発表までは“青木さん合格できなくてごめんなさい”と思っていました」と上野さんは試験を振り返る。
コーソルは、資格取得に関するサポートが手厚い。費用面だけでなく、試験を受けに行くとなれば、チームの仲間が快く業務調整を行ってくれる風土もある。Platinumを取れたのもそういった環境のサポートがあったからとのこと。さらに、同社には女性のエンジニアが多いのも、上野さんの働きやすさにつながっている。女性が結婚・出産をしても、仕事を続けられる環境が、コーソルにはすでにできあがっているとのことだ。
ところで、Platinumに合格して、技術的には自信を持てたのではと訊ねても、上野さんにはそういった意識はあまりないようだった。こうした取材の依頼をはじめ、周りからはたしかに「Platinum取得者」という目で見られるようにはなった。しかし、それで自信がついたというよりは、むしろ気が引き締まったという。
「青木さんがよくおっしゃっていたことですが、『資格に恥じないような』仕事をするよう、努力しようと思います」(上野さん)
最高位の資格を取得しても、あくまでもその態度は謙虚だ。