皆さんは、「ビジネスアーキテクチャー」という言葉を聞かれたことはありますか?本連載では、世界中の様々な方法論を参考にビジネスの本質的な構造と類型を体系化し、皆さんのビジネスイノベーションを支援することを目的とします。第1回となる今回は、イントロダクションとして、ビジネスアーキテクチャーの定義、ビジネスアーキテクチャーを構成する3つの大きな層について解説します。

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そもそも「ビジネスアーキテクチャー」とは何か?
「アーキテクチャー」という言葉は、もともと建築学で使われていたものであり、建築物の構造や設計工法を意味していました。その後、コンピューター時代の到来とともに、コンピューターに関する構造や設計全般に使用され、現在では様々な分野で使われるようになっています。
ビジネスにおいて、顧客やプロダクトといった物理的に形のあるものから、経営理念や戦略といった抽象的な概念に至るまで、様々な言葉が使われています。「ビジネスアーキテクチャー」とは、ビジネス活動に必要な物理的に形のあるものや抽象的な概念などの構造を、論理的かつ体系的に表現するためのフレームワークです。
ビジネスアーキテクチャーに近い言葉で、「エンタープライズアーキテクチャー」という言葉があります。事業体のビジネスプロセスや情報システムの標準化を進め、効率的な業務オペレーションの運営を実現するために、「エンタープライズアーキテクチャー」という設計思想が10年ほど前から提唱されるようになりました。エンタープライズアーキテクチャーは、ビジネスアーキテクチャー、データアーキテクチャー、アプリケーションアーキテクチャーおよびテクノロジーアーキテクチャーという4つの層より構成されています(図1)。

エンタープライズアーキテクチャーが、現在の日本においてどの程度実践され効果を挙げているかは定かではないのですが、少なくともエンタープライズアーキテクチャーは2つの前提を暗示しています。
1つ目は大規模な事業体(政府や大企業)を対象としていることであり、2つ目は情報システムの構築に関係していることです。いずれにせよ、ビジネスアーキテクチャーという最も重要な領域について、深い洞察を提供している文献や事例は日本ではほとんど存在していないのが現状です。
ITコンサルタントのなかには、「ビジネスアーキテクチャー=ビジネスプロセス」と捉える方もいますが、私たちが考えるビジネスアーキテクチャーはもっと幅広い領域を包含しています。また、エンタープライズアーキテクチャーにおいて捉えられているビジネスアーキテクチャーとは、以下の点において異なります。
- 中小企業や起業家を含むあらゆる規模の事業体においても活用できること
- 情報システムの構築を必ずしも前提としていないこと(もちろん情報システム構築のためにも役立ちます)
- 現在のような情報化社会およびネットワーク経済の時代に対応できること
- ビジネスユーザーがビジネスアーキテクチャー構築のイニシアティブを取ること
これから提示させていただくビジネスアーキテクチャーは、世界中で幅広く実践されている方法論やフレームワークをベースに統合や編集を行ったものです。もっとも、不完全な部分あるいはこれから進化すべき部分もあろうかと思いますので、皆様の積極的なご意見をお待ちして進化させようと考えております。
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白井 和康(シライ カズヤス)
ITコンサルティング会社所属。IT業界において20年以上にわたり、営業、事業企画、マーケティング、コンサルティングと幅広い役割に従事。2年前のある日、「日本のビジネスに光を!」という天からの啓示を受けて以来、ビジネス構造の究明と可視化に没頭中。好きな言葉は、「人生とは、別の計画を作るのに忙しいときに起こる出来事である。」(ジョン・レノン)Facebookページ「ビジネスアーキテクチャー研究ラボ」を運営中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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