「ユーザーの期待」と「体験」の“ギャップ”を埋める「モノ」と「コト」を含めたデザイン
まずは、ソニー株式会社ソニークリエイティブセンターのマシュー・フォレスト氏より、「こんなコトを待っていた!-製造業における、お客様の期待の醸成とは?」というタイトルで行われた事例報告を紹介する。
ソニータブレットの「使い出しの体験=開封体験(out of box experience)」をミッションに、ユーザーセンタード・デザイン(ユーザー中心設計、以下UCD)を実践しているマシュー氏。今後、ものづくり企業が、どうプロダクトデザインを取り入れていくのかについて講演した。
「ユーザーがどのように商品の箱を開けるのかを観察・分析し、作り手の考える理想と実際の差に注目した」と語るマシュー氏は、ユーザーインタビューを行い箱のデザインのプロトタイプを実施した。
ソニータブレットは、UCDにのっとって、それまで開発されていた。インタビューの結果、75%の人がセットアップに対してまったく問題ないと回答したが、マニュアルが最低限であることへの問い合わせや、想定された以上の変化が生活に起きなかったなど、作り手の意図したとおりのユーザー体験が提供できていないことが判明した。
そのような状況に対して、サービスデザインの手法である「カスタマージャーニーマップ」を作成したマシュー氏。「ユーザーの期待」と「体験」の“ギャップ”を埋める研究を始めた。
「一番の“コアUX(ユーザー体験)”は何かを考え、それをビデオで紹介し、期待をコントロールした。それは、それまでの広告製作アプローチとは違ったものだった」
コアUXから外れた人に対して、どうリカバリーするか。そのためのパターンを考え、それぞれのタッチポイントを洗い出し、体験を可視化し、そこに適切なUXデザインをもとにしたアプローチを導き出した結果、売上やユーザー満足度は向上したという。
「今後の課題は、“見えづらいサービスデザインの効果を図る手段”を、どう数値化していくかだ」
ものづくり企業にとって、付加価値こそがサービスデザインであると語るマシュー氏は、企業にとってはサービスすべてがプロダクトであり、“モノ”と“コト”を含めたトータルのデザインを行うことの重要性を語った。