企業が考えるべき「4+1の力」を活用するためのIT基盤
現在企業のIT基盤は、二つの要因によって大きな変革を求められています。
外部要因
一つは前述した、「4+1の力」が社会に普及しビジネスの変化が早くなったため、自社を取り巻くビジネス環境の変化への追随が求められています。企業は「新たなルール」を理解し、対応することが求められています。
内部要因
もはや当たり前となったサーバー仮想化技術。近年のトレンドとしてネットワーク仮想化等も注目を集めており、IT基盤にも「俊敏性」が求められるようになりました。従来、「コスト」と「安定」が主な評価手法だったIT基盤に、「俊敏性」や「分析力」といった異なる評価軸が求められています。
クラウドやスマートフォンの活用はコンシューマにだけメリットをもたらすのではなく、企業にも力になります。これらを自社の内部でどのように活用できるかは、今後の企業の競争力の差となるでしょう。
メディアの報道と実態が乖離する現状
コンシューマライゼーションによって生活者のライフスタイルや価値観は大きく変化しています。しかし、現在の日本企業はこれらの技術に対応するより、翻弄されるケースが多いのが実情です。
大企業が新しい技術に対応できない理由の多くは、「新しい技術を脅威とみなしていない」「新しい技術は認識しているが、それに見合った収益が見込めないので予算がとれない」「社内リソースや組織の問題で新しい技術が適さない」といった内容に分類され「組織の壁」を越えることができずにいます。
新しい技術の存在は認めつつも、手を出せない大企業。しかし、そんな実態をよそに様々なメディアで“ビッグデータの活用”や“ワークスタイルの改革”と声高に叫ばれます。メディアの描くバラ色の世界はIT業界に身を置く筆者にとって三歩も四歩も先の姿であるというのが、正直な感想です。
メディアが伝えない日本企業のリアルな姿
しかし、そんな日本の企業の中にもこの変化に対応しようと「組織の壁」を突破した組織が現れ出しました。『ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦』は、各業界を代表する企業にインタビューを行い、具体的な活用方法、組織の壁を突破する勘所を考察しました。
「ビッグデータ」と名のつく華やかな世界を描いた「ファンタジー」とは異なる、「組織の壁」を突破した日本企業の「リアル」。本書を読み終えて頂いたとき、これからの企業に求められる本当に大切な物に気づいて頂くことができるでしょう。(後編はこちら)
著者:大元 隆志、発行:翔泳社、発行日:2013年7月19日
※Kindle版はこちら
■CONTENTS
第1章:新たな時代を創る「4+1の力」
第2章:躍進する米国の革新的企業
第3章:動き出した日本企業
第4章:「新たな価値」を生み出すために必要な組織
第5章:これから何が起こるのか