サプライチェーンマネジメントにおける共通言語の必要性
コミュニケーションをとるためには同じ言語を使う必要がある
北京オリンピックでは世界中からアスリートや観客が集まり、盛大な開会式で幕開けとなりました。ところで、あの開会式のアナウンスで使われていた言語は何だったか覚えているでしょうか?
そうです、中国語、英語、そしてフランス語の三ヵ国語でしたね。大会中も様々な競技会場で、この三ヵ国語が共通言語として使われていました。
大会主催者がこのような共通言語を設定していた理由は言うまでもありません。もしも共通言語が特定されていなくて、参加国がそれぞれの自国語で案内放送することを主張したらどうなるか、容易に想像が付きます。国連会議の場において、韓国出身の事務総長がいつも英語で話しているのも同じ理由です。
正確な意思疎通のためには言葉の定義を統一することも必要である
また、同じ文字であるのに意味が違う用語があることを知っていますか? 例えば手紙、これは中国ではトイレットペーパーのことを指します。先生は中国では敬称で他人を呼ぶ時の様に使います。食べ物や飲み物を勧める場合の日本語であっても、土地が違うと全く逆の意味を指すことを知らずに口にしてしまい、恥をかいたなんてことを良く聞きます。
当然、サプライチェーンマネジメントにも共通言語が必要である
このように日常何気なく使っている言葉は、その意味または定義に注意を払わないで使うと大変なことになってしまう危険があるのですが、サプライチェーンマネジメントの世界ではどうなのでしょうか。
まず、『サプライチェーンマネジメント』とは何ですか? と聞かれてどのように答えますか。ある大企業の社長が『全社を挙げてサプライチェーン改革を断行するぞ!!』と鶴の一声を上げたとします。さっそく物流、購買、情報システム、製造、営業、そして経理などの各部門から、エースが選ばれて全社横断のプロジェクトチームが編成されるでしょう。
その最初の会議で、『そもそも我社にとってのサプライチェーンマネジメントとは何か定義しよう』と誰かが発言したとします。さあ大変です。『在庫削減だ』『納期短縮だ』『需要予測だ』『コスト削減だ』『週次計画だ』『顧客直送だ』・・・・・議論は白熱してしまい、当分終わりそうにありません。
『そもそも論』が一段落したところで、受注から出荷までのリードタイムを検証することになりましたが、議論しているうちにどうも話が噛み合わないことに気が付きました。
製造部門の人間は工場の搬出口からトラックで搬出した時点を「出荷」と定義しているようです。物流部門の人間は市中倉庫から運送会社のトラックで搬出した時点を定義しているようです。経理部門の人間はコンテナー船に積み込まれた時点を言っているようです。
同じ会社の中でもこのように様々な定義があるとすると、会社や業種が異なった場合のことを考えるだけでも気が遠くなりそうです。