はじめに
一度頓挫したERP導入プロジェクトはたいていの場合失敗プロジェクトとなります。
無理矢理システム稼働に持ち込むケースもありますが、大抵の場合はERPが辛うじて動いているという状況になります。主導した一部の関係者とベンダーだけが「ERP導入に成功した」と自画自賛し、多くのユーザーや関係者は一様に口を閉ざすことになるのです。
しかし、これはまだシステムが稼働しているだけ良いケースです。最悪の場合には、莫大な費用と時間を掛けたにも係らずお蔵入りとなったり、ユーザー企業がベンダーを相手取って訴訟を行うような場合もあります。
では、一度頓挫してしまったERP導入プロジェクトは、もう成功することはできないのでしょうか?
結論としては非常に困難と言えます。しかし、ごくまれに失敗プロジェクトが復活して、成功へ至るケースが存在します。今回は、そんなケースを紹介します。
一度頓挫したERP導入プロジェクトは、ほとんど復活しない
ご存じの通り、ERP導入を途中であきらめたり、部分稼働でお茶を濁してしまったりすることがしばしばおこります。導入が頓挫する理由はいくつかありますが、良くあるのは次のようなものでしょう。
- ERPへの過剰な期待
ERPを魔法の箱と思い込んでしまい、現状のビジネス環境やエンドユーザーの状況を無視した理想論に走ってしまった。結果として、ユーザーから大反発を受けてプロジェクトが止まってしまった。
- 追加費用をめぐるトラブル
ERPを提案した時にはあれもこれも出来ると言っていたベンダーが、プロジェクト途中で『これは当初想定していた条件と違うからできない』とか、『特殊なケースだから追加の作業やアドオン開発の費用と期間を上乗せしてくれないとやらない』と言い始めてしまった。
特に費用を追加してくれないと導入できないというケースは多く、提案時にリスクを積んで概算見積りをしていたにも係らず、結果として導入費用が2倍、3倍に膨らむケースも多々あります。
費用や期間が膨らむのはプロジェクト内容や状況からみてやむを得ないケースもあります。しかし、「どの部分にリスクがあるのか」「どのような場合にどれだけ費用と期間が上ブレするのか」という説明を、ベンダー側が提案時に明確に提示しているかがポイントです。
フェーズや作業内容ごとに、人月工数や費用試算の根拠を確認することが、上記のようなリスクを回避するコツです。ひどいベンダーになると、受注せんがための大幅値引きをしたうえで「追加費用が払えなければ、これ以上の作業はやらない」というような駆け引きをすることがあります。
ユーザー企業側としては、途中で頓挫することだけは避けたいという思いがあります。大抵の場合は釈然としないまま追加費用を払い、結果として高い買い物となってしまう場合が多いようです。
筆者の知る限り、予算オーバーするERP導入プロジェクトの方が、予算を下回って導入出来たケースよりも遥かに多いようです。少しでも安く導入したいという思いが、安かろう悪かろうの典型事例を招くことになることも多いのです。そして、プロジェクトが頓挫するとリカバリはかなり困難です。