「DevOps」の目的は速く安く、中品質で継続的に
近年IT業界でバズワード的に飛び交っている「DevOps」。ガートナーによる「DevOps」の認知度調査によると、程度の差はあれ「知っている」と答えた人は2015年3月の50.9%から2016年2月の1年で57.6%と増えており、認知は徐々に広がっていることがわかる。しかしながら、長嶋氏が日常的に様々なIT関係者と触れ合う中では、誤解や部分的な理解が見受けられるという。「DevOps」の定義は会社の数、人の数だけあると揶揄する向きもあるほどだ。
「ITシステムにおける迅速かつリーンな実践を通して、ITサービスデリバリをより速く実行することに焦点を当てたITカルチャーの変革。加えて人や文化を中心に据え、運用チームと開発チームのコラボレーションの改善、迅速性を重視した新たなITサービスデリバリのためのアプローチ」
これはガートナーの定義だが、決して1つのテクノロジーや具体的な方法論を指しているわけでもない。急速に変化するビジネスニーズに合わせ、より短期間で柔軟なシステム開発を継続していくという考え方なのである。そして、開発(Development)と運用(Operation)を合成した言葉どおり運用と開発の連携が重視されており、導入の際には人や体制も重要な検討項目として含まれる。
そして長嶋氏は、押さえておくべき重要事項として「目的」をあげる。
「『DevOps』の目的はあくまで『より速く安く満足できるサービスを作り、提供し続けること』。性能や品質を向上させることが目的ではない。しかし、ごく当たり前のことながら、どうしても忘れられてしまう傾向にあり、それが混乱のもとになっているようだ」
同じように開発・運用の考え方として品質向上を目的とする「ITIL」(ITインフラストラクチャ・ライブラリ)があり、選択か融合か、両者の関係について悩む運用担当者は少なくない。しかし、全くの別物として認識するのが妥当だというガートナーではITILとDevOpsの2つを分けて「bi(2つの)-Mode」として運用することを推奨している。そうすることで、互いの利点を相殺することなく、DevOpsについても「速い」「安い」「使いやすい」などのメリットを損ねずに享受することができるという。