EnterpriseZine(エンタープライズジン)

EnterpriseZine(エンタープライズジン)

テーマ別に探す

日本でパッケージを作るのが難しいのはなぜ?/経営者の引き際について

edited by DB Online   2016/07/29 13:00

どう、おやめいただくか

井上 さっき言った「30代くらいで、神林さんみたいな人」っていう、「みたいな」っていったのは、ユーザー企業として何かを作るという意味ですか?

編集部 はい。追い込まれた若者が超がんばる的な。

井上 逆に言うと、ユーザー企業として個別解をやるのはよくないんじゃないですか?

神林 ユーザー企業として個別解をやるのはよくないかっていうと、あの、

井上 まあ、いい悪いはまたちょっとあれか。

神林 そこは、バランスはとると思うんですよ。僕の場合は例えば発注のロジックはこういうのっていうの、それは固有のものだからそれは共有化ができない。ただEDIでやるっていうところ、取引先とやるところは共有化できるから、それは標準化しましょうって、僕、標準化に動いたんですよ。

井上 ああ、なるほど。

神林 僕は、今の日本のBMSっていう小売流通業のEDI標準を作った初期メンバーのひとりなんですよね。もう昔話ですけど。

井上 なるほどね、そういう動きがあったんですね。

神林 だから両方に分けて、これは一緒にやろう、これは個別にやろうってちゃんと分けてやったんですよ。

井上 そこまでやるのは今だと難しい?

神林 やあ、今は非常にもう……じゃあ、EDIとか、ある程度業界を動かして共有化しましょうとか、やれる人がどれだけいるかっていうと、まあ、いるとは思いますけど、動ける能力がある人はたくさんいると思いますよ。ただ、環境は僕のときより今のほうが厳しいです。

編集部 そうすると、や、大変だからパッケージ使おうか、パッケージに合わせていくしかないよねー、みたいな流れに?

井上 あー逆説的に?

神林 それはあるかもしれないですね。

井上 確かに、だんだんいろいろなものが複雑化していってわけがわからなくなると、使わざるを得なくなるかもしれないですね。

神林 だからどこまでがんばれるのかっていう、彼ら、若者がね、今後のITを引っ張っていく、産業として残るかどうかっていうのは大きい。ハードルは上がっている。ユーザー企業もITベンダーもそこは同じだと思うんですよ。

編集部 こういう話を聞いていると、今、30歳くらいの小売の情シスに取材してみたくなりますね。

神林 たぶん、いない。年寄りばっかり。

井上 だったらもう自分で内製で作る力もなくて、昔のものを使い続けるしかないですね。

神林 あー、そっちですね。そっちです。

井上 でも使い続けるのもやっぱり……まあ、使い続けるだけだったらできるのか。

神林 たぶん、自分が引退するまで使い続けるんじゃないですか。

井上 どこまで使い続けられるのかな。ハードウェアだけ刷新していけばなんとかなってしまう?

神林 なんとかなりますね。いまだにオール汎用機っていうユーザーさんもいらっしゃいますよ。オープン化ができてないんですよ。2016年ですよ。10年前じゃないんですよ。

井上 まあ、汎用機を作るベンダーが存在し続けて、ソフトウェアを変えなければ動き続けますからね。

神林 動き続ける。だれも困らないですからね。

井上 だれも困らないと、変えるモチベーションもないですね。そうなると新しいシステムでできた会社が置き換えるとか。

神林 うん、まあ、会社自体を置き換えるしかないですね。そういう風に新しい仕組みで動くような会社にぼろくそに負けるとなれば。

井上 あるいは、第1回のバズワード論争になりましたけど、ある種のバズワードと、幻想でもいいので……

神林 まあ、でたらめでやるしかない(笑)。わはは(笑)

井上 いや、でたらめじゃなくて、もう今更ホストじゃないよ、というのを。もしかしたら、経済合理性でいえば動き続けるし、ハードウェアだけ変えてソフトウェアを変えなければバグも入らない。それはそれでありかもしれないですけど、もうホストなんてないよという風潮で、強引にでも世界を変えていくという……

神林 それはIT的な変えかたじゃないと思うんですよ。バズワードでITで変えるっていうよりは、IT業界の中の人の話だと思うので。ユーザー企業、まぁ言ってみればITベンダーもそうですけど、どれだけ年寄りのわがままを殺せるかみたいな話だと思いますよ。どれだけ、引退していただく、ということを下がちゃんとドライブできるかということに尽きると思います。世代的な、世代交代を促す力を若者なり、中堅なりが持てるかってことにかかっているんじゃないですかね。年寄のほうが人数多いですからね。経験も上ですし。力もたぶん上なので。権力も持ってますから、それにどれだけ、「いや、もういいから、変えろ」ということを、「あなたがたはそれでいいけど、我々は困るから、代わってください、代わりやがれ」ということを、

井上 いま、代わるって言っているのはポジションのこと?

神林 そうですね。もうやめていただいて。

井上 僕はもう少し楽観的で(笑)。神林さんの意見は、「年寄りに絶対変わらない」っていう立脚点じゃないですか。

神林 あーそうです、そうです。

井上 でも意外に、後先ないし今生最後の大勝負をしてみようかなっていう年寄りもありかな、と。

神林 それは少数派ですね、きわめて。

井上 少数派ですか。

神林 大勝負やろうという人はもうやめてますよ。そういう博打打ちの年寄りで、今、一番多いパターンは、一線から引いて、顧問やったりとか、社長会長を辞めてしまって、趣味の世界にがんばってます、とか、そんな感じの人が多いですね。今、先頭で70とか80とかで社長をやっている人って、意外にサラリーマン社長だったりしますからね。そういう意味だと初期のころから立ち上げて、一発博打を打つみたいな人はあんまりいないですからね。減ったと思いますよ。それはたぶんみんな同じこと言っていると思います。なかなか難しい。で、上からっていうよりは、下からどれだけ変えていけるかっていうほうが大事なような気がします。

井上 それはどっちの手段でもいいかなと。

神林 まあまあ、ある程度マーケットができてしまって、均衡している状態だと、無理やりでもぐるっと回す方向で動かないと、それはITの技術かもしれないですし、人の個性かもしれないですけど、やらないとちょっと芽はないよねという感じですね。


著者プロフィール

  • 井上誠一郎(イノウエ セイイチロウ)

     株式会社ワークスアプリケーションズ  Partner/Executive Fellow  ロータス株式会社時代、アメリカ・ボストンのIris Associates社に出向、Lotus Notesの開発に従事。その後、アリエル・ネットワーク株式会社の創業メンバーとして参加、CTOを務める。現在は株式会社ワークスアプリケーションズのエグゼクティブフェローとして、製品横断のパフォーマンス改善、開発インフラの改善、採用(グローバル)、教育等に従事。また、同社の新製品である世界初の人工知能型ERP「HUE」開発のアーキテクチャー責任者を務め、グローバルでの開発を指揮している。

  • 神林飛志(カンバヤシ タカシ)

     ノーチラス・テクノロジーズ 代表取締役社長  1998年、小売りチェーンのカスミに入社。2002年10月にウルシステムズ取締役に就任。2011年10月ノーチラス・テクノロジーズ代表取締役副社長を経て、2012年4月より現職。オープンソースの分散処理ソフト「Hadoop」で基幹系のバッチシステムを実現するための「Asakusa Framework」を開発、分散処理システムの導入を手掛けている。

  • DB Online編集部(ディービーオンライン ヘンシュウブ)

    DB Online編集部 翔泳社 EnterpriseZine(EZ)が提供するデータベース/データテクノロジー専門メディア「DB Online」編集部です。皆様からの情報お待ちしています。 Twitter : https://twitter.com/db_online Facebook : http://www.facebook.com/dbonline.shoeisha

バックナンバー

連載:IT屋全力反省会

もっと読む

All contents copyright © 2007-2021 Shoeisha Co., Ltd. All rights reserved. ver.1.5