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日本でパッケージを作るのが難しいのはなぜ?/経営者の引き際について

edited by DB Online   2016/07/29 13:00

パッケージを作るむずかしさ

編集部 井上さんが前回、「ワークスはすごい額を投資した」っていうのは、そういうところにお金を投資したということでしょうか?

井上 まさにそうですね。ユーザー企業的な立場で言ったら、神林さんは両方の立場だと思いますけど、ある種パッケージベンダー側の怠慢じゃないですか(笑)

神林 うん、まあ、そうですね(笑)。怠慢っていうか……

井上 怠慢というか、難しいしどうせできないだろうっていう諦念的なものだと思うんです。でも一方で、それを言っている限りはずっと個別解をあらゆる日本企業がやり続けて、パッケージも育たず、ITのコストだけがどんどんかかっていくという構造じゃないですか。そこをブレークするためには、作り手が汎用的なものすごいものを作るまでがんばるか、それこそSAPだったりオラクルだったりの議論かもしれないですけど、さっき業界団体の中でも抽象化している部分があるっていう話、あそこをより広げていくしかない。むしろ業界団体の中に、個別解が少なくなる方向でっていう流れはないんですかね?

神林 それはあると思います。そういう試みはやっぱりやっていかないとだめだよねっていう意識はあるんですけどね。

井上 業界の中でもより効率化されるはず……まあ、そこは微妙なのかな。個別の最適化が効率的って話もあるし、共通化したほうが効率的だっていう話もあるし。

神林 難しい…あの、すごく難しいんですよ。あの、どうすればいいんですかね。たとえば共通化をしたほうがいいっていう考え方がある一方で、まあ、共通化をしないことが競争に勝つための源泉になるよっていう発想の人もいるんですよね。だからそこら辺が常にぶつかってしまうところがあるので、最終的にどこまで共通化したほうが業界にとってプラスかというところは意見の一致はないんじゃないかなあ。有名な例で言うと、たとえば小売業ってたくさんあるわけですよ。大きくは百貨店、コンビニエンスとGMSっていうくらいの区分けがあるんですけど、GMSっていうのは、ある程度EDI、要するに取引先とのやりとりについて共通化しましょうということをやっていて、割と成功しているんです。でも、たとえば、規模から言ったらコンビニエンスストアも相当でかいわけですよ。ローソンだったり、セブンだったり。実は彼らは全部独立でやっています。業界標準のコンビニ業界向けのEDIってないんですよ。ないんです。百貨店はまだあるんです。それでまた、家電はないんですよね。あったんだけど、けんかしちゃった。仲が悪くなって。というのがあって、同じ小売だけでも、業種が違っただけで、標準化できるところもあれば、できていないところもあって、それはなんでかっていうと、まあ、見ていると、経営的な、経営的っていうか、中で働いている人の考え方だったり、下手すると感情論だったり、そういうものがすごく大きいので、あまり経済合理性はないんですよね。

井上 一方で、標準規格好きな人たちもいるじゃないですか。あれは国民性みたいなものなんですかね?

神林 いや国民性というよりは、言葉が通じないからじゃないですかね。各プレイヤー、ステークホルダーが英語を話せればいいですけど、ある程度標準を決めないと会話ができません、という文化があると思っています。

井上 それは日本以外に?

神林 日本以外に。だから、ヨーロッパだったり、アメリカだったり、

井上 ヨーロッパはそうですよね。いろんな言語があるので、

神林 だから標準化をやっていかないと効率が悪いよねっていう発想は多分あるんですよ。

井上 なるほど…じゃあ、日本語で統一しているのがよくないのか。

神林 ええ、そう。逆に。話せばわかる、みたいなところが出てしまっている。ある程度均一になってしまっていると、標準することのメリットが少ない、標準化しなくても標準化されているからある程度っていう。全然文化が違うところであれば、標準化することでコストを下げるっていうインセンティブが社会的なインセンティブがわくんですけど、それがやっぱりないですよね。

井上 確かに、そこはヨーロッパと日本でだいぶ違いますね。アメリカもアメリカに閉じるとヨーロッパほどの標準化じゃないのかもしれないですね。

神林 アメリカは、やっぱり中はバラバラなんですよね。言われているほど……その、やっぱりユナイテッド・ステイツなんですよね。そういう意味だと標準化をしましょうというのは強いですよね、アメリカも。地域によって違うとか。

井上 ヨーロッパはわかりやすいじゃないですか。いろんな言語があって文化もバラバラなんで、標準化したときのコストに対してのメリットが大きいと。でもアメリカは言語は英語ですよね。

神林 言語は英語ですけど、考え方がまったく違いますよね。

井上 まあ、ヨーロッパの延長と思えばってことなのか。そこは。

神林 中西部から始まって、東、西で違いますし、日本なんかよりバラエティもすごいと思いますし、全員が英語をしゃべるわけではないし。なので、現実的に小売りあたりだと、言葉がしゃべれないのを前提として業務システムを作っていくような会社がありますからね。

井上 だいぶ本質的なところへ来たような気がしますね。パッケージができないことに対する。

神林 やっぱり、その、いらない……んじゃないかな。均質な社会だとパッケージがあったり標準化っていうのメリットが、なくはないんですが、メリットが薄いのは間違いないですよね。同じようなことやってるんだから同じようになるよっていうことであれば、そうなってしまうので、まあソフトウェアというより、作り込みをしてもそんなに高いコストにならずにやれてしまうというのもあるかもしれないですね。

井上 日本も、今から日本語が通じないほど分化するってことはないでしょうけど、世代が離れて同じ日本語を使っていてもコミュニケーションが取れなくなったら標準化がいるようになるかもしれない。

神林 可能性があるとすれば、各企業が突出する、やってることがお互い全然違うという風になってくると、逆にある部分については手を握ったほうがいいよねっていう発想になってくれればいいですよね。だからうちはこういうやり方をしている、全然違うと。競合がまったくないことをやっていると。で、B社はまた全然違うことをやっているんだけども、ある部分、たとえば給与計算、あるいは取引先のやり取りとか、在庫管理とか、そういうことになってくれば、そこをまあ共通でやりましょうということにはなってくると思う。今はそこまで行ってないんでしょうね。右見て同じようなことをやるっていうことをやって回ってしまっているので、そういう意味ではあんまり、ちょっとぐらい作ったほうが、コストが吸収できてしまうと。

編集部 同じようなことをやっているのにパッケージで共通みたいなことにはならない?

神林 ならないですね。同じようなことをやっているので、作る側も慣れているので、すごくでたらめな見積もりにはならないんですよ。その割にはわりと懇切丁寧なところを作ってくれるので、あまり別々のものを作るよりは、ベースが同じものを何回も作ったほうが……儲かるじゃないですか(笑)。

編集部 ワークスさんの前で、そんな(笑)

神林 儲かるからね(笑)

井上 今の日本は、ある程度の合理性で使う側も作る側も個別解が成り立っているのが現状であると。でもそれは作り手からみるとあまり健全とは思えないですね。

神林 うん、そうですね。作り手から見てもユーザーから見てもあんまり健全じゃないんですよ。ただもう、ビジネスとしてがっちり回ってしまっています、というのが現状なので、まあどうにも止まらないよねっていう。

井上 なので、ユーザー企業が弱っていくと、まあ、使わざるを得なくなる方向になるかもしれない。

神林 かもしれない。だからタイムアウトがどのへんかみたいな話でしかないですね。

編集部 それがいま、30代くらいの人が。

神林 くらいますよ、まともに。

編集部 でも神林さんみたいな人が……

神林 へい。

編集部 あらわれるかもしれない。

神林 無理でしょうねえ。今すごく難しいと思います。僕が30のときにやったことを今の30にやれっていうのは非現実的だと思っていて、まずハードルが高いです。僕がいたころはコンプライアンスとかあんまり言われなかった。いや、言われたけれども、たかがしれているんで、まあ割と好き勝手できた。今は、僕が20代30代のときより年寄りは増えているし、規制も厳しくなっているし、緩和されていないですよ、全然。緩和したって言ってますけど、現実的には緩和してなくて、日本の規制って2種類あって、一つは法律上の規制があるんですけど、もう一つは内部で「忖度」してですね、いろいろこうだよねって勝手に考えるみたいな枠をはめてしまうので、それが前よりきついですよね。だから、以前よりもまずハードルが上がっているというのが一つ。あとは、やっぱり成果が出にくい。投資をしていろいろやったところで、結果が出るかっていうと出ないですよ。そんなに投資したからといって収益がガンガンあがったり、利益がガンガンでるわけではない。


著者プロフィール

  • 井上誠一郎(イノウエ セイイチロウ)

     株式会社ワークスアプリケーションズ  Partner/Executive Fellow  ロータス株式会社時代、アメリカ・ボストンのIris Associates社に出向、Lotus Notesの開発に従事。その後、アリエル・ネットワーク株式会社の創業メンバーとして参加、CTOを務める。現在は株式会社ワークスアプリケーションズのエグゼクティブフェローとして、製品横断のパフォーマンス改善、開発インフラの改善、採用(グローバル)、教育等に従事。また、同社の新製品である世界初の人工知能型ERP「HUE」開発のアーキテクチャー責任者を務め、グローバルでの開発を指揮している。

  • 神林飛志(カンバヤシ タカシ)

     ノーチラス・テクノロジーズ 代表取締役社長  1998年、小売りチェーンのカスミに入社。2002年10月にウルシステムズ取締役に就任。2011年10月ノーチラス・テクノロジーズ代表取締役副社長を経て、2012年4月より現職。オープンソースの分散処理ソフト「Hadoop」で基幹系のバッチシステムを実現するための「Asakusa Framework」を開発、分散処理システムの導入を手掛けている。

  • DB Online編集部(ディービーオンライン ヘンシュウブ)

    DB Online編集部 翔泳社 EnterpriseZine(EZ)が提供するデータベース/データテクノロジー専門メディア「DB Online」編集部です。皆様からの情報お待ちしています。 Twitter : https://twitter.com/db_online Facebook : http://www.facebook.com/dbonline.shoeisha

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