構造化だけでなく、評価と改善のための仕掛けを持っているSCORモデル
第四話までの記事を読まれた方は、自分の会社のサプライチェーンや日常生活に関わるサプライチェーンを、世界共通の用語と記号を使い、階層構造のプロセスで他人に説明することが出来るようになったはずです。
これだけでもすごいノウハウまたはナレッジを身に付けたと言って差し支えないと思います。しかし、SCORモデルはこの他にも2つの機能を提供しています。すなわち、これらのプロセスを測定評価する方法と、プロセスを良くするための施策が残っているのです。
第五話では共通の用語、定義、そして計算式を使い、サプライチェーンを構成するプロセスを測定し評価することで、その中に潜んでいる問題やリスクを明らかにする方法について説明したいと思います。
「顧客の視点」と「企業の視点」でサプライチェーンプロセスを計測する
さて、ここで忘れてはいけないことは、SCORモデルはサプライチェーンを階層構造のプロセスとして表現していることです。よって、サプライチェーンを測定評価する場合もこの階層構造に沿って行うことになります。
さて、構造化を行う場合は、自社のサプライチェーンを最初からレベル1から順番に展開していきました。測定評価の場合は、いきなり構造化に取り掛かるのではなく、まずサプライチェーンを『顧客の視点』と『企業の視点』の両面で評価することにします。
二つの概念が存在することでメトリクスの構造を分かり易くしています。サプライチェーンは需要と供給があって成り立つ訳ですが、需要側からの評価が『顧客の視点』で、供給側からの評価が『企業の視点』ということになります。
顧客の視点は、サプライチェーンの『信頼性』『応答性』および『機敏性』の3つに、企業の視点はサプライチェーンの『コスト』および『資産』の2つにそれぞれ展開します。そして、それらを合計した5つの観点で評価出来るように、レベル1以降の測定評価指標(以降メトリクスと表現する)を階層化していくのです【図5-1】。