デジタルトランスフォーメーションに必要な要素とは何か、どう実現するか
さて、今年である。「Dell EMC World 2017」はラスベガスの大会場で盛大に開催された。参加者は世界122カ国から1万3500名。基調講演で同社が語ったトランスフォーメーションの柱は4つある。デジタル、IT、ワークフォース、セキュリティだ。
まずはデジタルのトランスフォーメーションから。これはDell EMCの真骨頂のようなもの。近年ITは企業のビジネスを裏方で支えるものではなく、ITそのものが企業の競争優位性になりつつある。例えば車を持たずに移動手段を提供するUber、不動産を持たずに宿泊場所を提供するAirbnbが実現しているようなことだ。こうした全く新しい発想による新興ビジネスはそれぞれの業界に大きなインパクトを与えている。
そしてデジタルトランスフォーメーションを実践しているのはもう新興企業だけにとどまらない。歴史ある企業も乗り出している。創業1903年の自動車大手Fordは、2016年に「これからは移動のためのソリューションを提供する企業になる」と宣言した。Fordはビジネスを自動車製造だけではなく、人間が移動するためのあらゆるソリューションへと広げたのだ。
Fordの新しい取り組みはこれまで同社が持つ自動車製造に関するノウハウを生かしつつ、ITを活用してこれからの需要に幅広く対応していこうとする狙いがある。アメリカでは「APP LINK」というアプリを通じて自動車の操作や保守に役立つ機能を提供している。
Fordの大胆な変容には驚かされる。しかしこれこそがデジタルトランスフォーメーションの典型例だ。デジタルトランスフォーメーションで成否を分けるのはソフトウェア。企業の強みをいかにソフトウェアに盛り込んでいくか。それも素早く形にすることが重要になる。そうなると自社で開発できる人材や環境が必要になる。企業だけが持つ強みを素早く形にするのだから、他社に依頼しては自社の強みを生かし切れないし、時間もかかるからだ。
とはいえ、一般の企業で自社開発は敷居が高い。そこでアプリ開発の修行の場となるのがPivotal Labs。座学ではなく、アジャイル開発を実際に経験してノウハウを会得する。実際に受講するとPivotal Labsのスタッフが終日家庭教師のように付き添い、みっちり教えてくれる。日本だと研修場所は六本木にあり、一般企業の開発担当がなじみのSIer社員と一緒に学ぶケースもあるそうだ。
インフラも欠かせない要素となる。デジタルトランスフォーメーションを起こすにはソフトウェア開発とデータ活用が絡み合い、循環していく環境が必要になる。アプリケーションを開発して新しいサービスを提供し、新しいアプリケーションを通じて得られたデータを分析し、そこから得られた知見をアプリケーションやサービスに反映していく。これを繰り返して改良を重ねていく。
こうした新しい環境を構成するのはプライベートまたはパブリックのクラウド、クラウドが提供する多様なサービス、新しいアプリ開発に適した言語、素早くデリバーするために必要なツールなどなど。デジタルトランスフォーメーションで提供されるクラウドネイティブなアプリケーションには、アジャイル開発と継続的デリバリーに強いPivotal Cloud Foundryが有効だ。様々なツールを統合しているため、開発生産性や運用効率性を飛躍的に高めることができる。
なおDell EMCではクラウドネイティブではないアプリケーションのためのプラットフォームが用意されている。場所はオンプレミスからオフプレミス(クラウド)まで、業務のタイプとしてはミッションクリティカルにはVirtustream、一般的なアプリケーションにはVMwareなどを用いたソリューションがある。