2023年11月15日、Zuoraは新製品の国内販売にともなう記者説明会を開催。同社のイベント「Subscribed Connect Tokyo」の開催にあわせての発表となった。
日本国内では、Apple MusicやNetflixなどがローンチされたことを受けて、2015年が“サブスクリプション元年”と言われており、そこから年を追うごとに市場が拡大する中、昨今は市況も一段落。製造やIT・ソフトウェア、新聞・出版など、危機感の強い業界・業種における本格的な取り組みが見受けられる。Zuora Japanでは、自動車や家電、重電、複合機などの国内製造業における導入も進んでいる一方、ユーザーを取り巻く環境は大きく変化しており、「『Modern Business』が成功の鍵になる」とZuora Japan 代表取締役社長 桑野順一郎氏は指摘する。
従来のプロダクト販売モデルでは出荷台数などが重要視されていたが、約15年前から始まったサブスクリプション・エコノミーによって“利用”へと観点が移っていった。一方、サブスクリプション市場は成熟し、“サブスクリプション疲れ”と言われるような飽和状態へと市況が変化している。実際に、SaaSのNRRと売り上げ成長率を比較しても成長は減速しているという。その状況下、従来的な手法に回帰する企業が見受けられるが「そのようなやり方を続けてはいけない」とZuora 創業者兼CEOのティエン・ツォ氏。サブスクリプション・エコノミーへと移ったNew WorldからOld Worldに回帰するのではなく、"New" New Worldへと移行すべきだとして、前述した「Modern Business」の重要性を訴える。
持続的な競争優位性を築くためにはModern Businessが欠かせず、リカーリングリレーションシップ、リカーリングレベニューだけでなく、“リカーリンググロース”を戦略として重要視する必要があると話す。たとえば、The New York Times Companyは、脱バンドル化を推し進めることで顧客ニーズに沿ったビジネスへと転換できているように、持続的な成長をもたらすフライホイール(仕組み)に適切な収益化技術を組み合わせ、LTVを最大化していくべきだという。
そこでZuoraは、英ロンドンで開催されたイベントにて「Zuora for Consumption」にネイティブメディエーションエンジンを搭載することを発表。ニアリアルタイムに消費状況を可視化して、適切な打ち手を講じることができるとツォ氏。加えて、Web経由の収益向上を実現するためのソリューションとして「Zephr」を発表しており、日本国内での販売も行うことを公表した。
従来のZuoraソリューションにおいては、CRMからERPに至るまでの一連の処理フローをカバーしていたが、Zephrによってその領域を拡大していくという。具体的には、サイト訪問者の属性に応じて適切なオファリングを行えるとしており、たとえば初回訪問者には試用プランを提案したり、既存顧客には特別価格での購入を促したりする仕組みをノーコードで設定できる。通常の開発工数が必要なところを専用ビルダーで容易に構築できるため、必要な施策をスピーディーに試すことが可能だという。
既に日本国内では、毎日新聞やぐるなびがユーザーだとして、毎日新聞社 デジタル推進本部長CDO 高添博之氏が登壇。同社では2015年6月からサブスクリプションを導入しており、毎日IDの会員は127万人と毎月1万人ほど新規会員が増えている一方、「スタンダードとプレミアムという、2つのサブスクリプションプランを用意している中、果たして読者のリクエストに応えられているのか。これまでのやり方では限界があると感じていた」と話す。
同社では、会員管理システム「Azusa」を内製開発しており、Zuoraとデータ連携させながら前述したZephrを導入。会員ごとに適切なオファリングを行えるだけでなく、ABテストも瞬時に行える点が決め手となったという。従来は、開発工数に2週間ほど時間を要していたが、Zephrならばノーコードで工数を削減できるだけでなく、実施状況を可視化できるところが利点だと高添氏。ダイナミックオファーの機能を使いながら、より顧客のニーズに応えていきたいと述べ、会見を締めくくった。
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