2024年10月24日、CyberArkは年次コンファレンス「IMPACT World Tour 24 Tokyo」を開催した。
開会に先立ち、CyberArk Software 執行役社長を務める柿澤光郎氏が登壇。「1999年に設立されてから25周年を迎えることができ、時価総額はサイバーセキュリティ専任会社ではトップ6に位置している。『特権アクセス(PAM)』の企業だと認識している方が多い一方、これからは『アイデンティティセキュリティ』の重要性が高まっている」と述べる。
日本においてもアイデンティティの数は膨れあがっており、IoT機器なども増えたことで管理すべき“マシン・アイデンティティ”も増加。加えて、AIによる影響も高まっている中、同社はPAMだけではなく、すべてのアイデンティティを保護するための企業になっていくとして、CyberArk Software 創業者兼取締役会長 ウディ・モカディ(Udi Mokady)氏に水を向けた。
モカディ氏は、「New Threats, New Paradigms(新たな脅威、新たなパラダイム)」と題して、最新動向について言及。「今まさにパラダイムシフトが起こっている」と指摘すると、アイデンティティセキュリティにも変化が必要だと説明を始める。
AIが浸透することでアイデンティティの数は増えていき、リモートワーク環境の普及やIoT/OT機器の増加、攻撃者の手法も変わっていく中で保護が難しくなっているという。同社調査によれば、74%の組織がサードパーティーリスクを懸念したり、98%がデータ漏洩によるビジネスへの影響に直面しているとも回答したりと、「すべてのアイデンティティに“適切な特権制御”が必要だ」と述べる。
そこで同社が掲げるのが「CORA AI」というコンセプトであり、すべてのプラットフォームにAIを組み込むことで検知力を向上させるなど、機能拡張に努めているという。これまで静的アプリケーションにSSO(シングルサインオン)などが導入されてきたが、昨年同社では「Secure Browser」を投入。「Secure Web Session」とあわせて、セッションハイジャックなどの脅威を回避できるとする。加えて、CORA AIを用いた“ITDR”を実現しており、自動的に脅威を検知することで適切に対処できるという。また、PAMの導入も進んでいる一方、「われわれはPAMをつくったが、これをアップデートする必要がある」とモカディ氏。たとえば、Vaultに保管していた認証情報が窃取されるようなケースを防ぐためにもSecure Browserが有効であり、摂取された認証情報が利用された場合は自動的にセッション不可にしたり、ローテーションをしたりが可能だという。システム環境が刻一刻と変化していく中では、“ジャストインタイム”での対応ができるよう機能強化を進めているとして、データベースへのJITアクセスなども挙げられた。
また、開発者はテスト環境だけでなく本番環境においても柔軟にアクセスが可能であるため、業務を阻害しない形での保護強化が必要だとする。そこで、Secure Cloud Accessによる「ゼロスタンディング特権」機能を設けており、クラウドコンソール下でも特権管理が可能だという。たとえば、必要のない権限を検知して提案したり、攻撃者に追加認証を求めたり、該当のセッショントークを削除したりと、CLI認証情報の窃取による脅威を遠ざけられるとする。さらにマシン・アイデンティティの特権管理においては、自動化が欠かせないとして「Secrets Hub for AWS, Azure, & GCP」によってローテーションだけでなく、CORA AIによって過剰なシークレット利用を検知して自動的にローテーションを実施できるという。
加えて、10月1日に買収を完了したVenafiについて言及。両社のソリューションと知見を活かしながら、マシンアイデンティティ・セキュリティをエンドツーエンドで保護できるようになるとモカディ氏。更新が必要な証明書を提示してくれたり、自動的に無効化したりと、マシン・アイデンティティだけでなく、従業員やオンプレミス/マルチクラウド環境を統合的に保護できるとして、「今回の買収はユーザーにとって大きなメリットがあり、(パラダイムシフトといえる)環境変化にも対応していける」と述べる。
なお、CyberArkは、9月にナスダック上場から10周年を迎えており、創業者として25周年も迎えられたことに喜びを表しながらユーザーやパートナー企業へと感謝を述べた。
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