NTTがDellを選んだ1つの理由は仮想化インフラ
日本電信電話株式会社 代表取締役副社長の澤田 純氏は、今回のスマートシティの実証実験では「リアクティブに現場の状況を把握し、そこからプロアクティブにさまざまな予測を行うものです」と言う。それをIoTの技術を活用し、柔軟に実現できるようにする。そのためにNTTグループとDell Technologiesが協業し「コグニティブ・ファウンデーション」という仕組みを提供する。
これはデータを蓄積して分析するクラウドから、IoTのセンサーデータを現場でも処理して活用するエッジコンピュータに至るまでの、仮想化されたICTリソース群をEnd-To-Endに「Multi Orchestrator」を用い連携させるもの。それにより迅速なICTリソースの配備と、ICTリソース構成の最適化を実現する。この仕組みでマルチドメイン、マルチレイヤ、マルチサービス/ベンダー環境においても、ICTリソースの最適化が図れるものになる。
このコグニティブ・ファウンデーションでは、仮想化されたICTリソースのインフラ部分を、VMwareの仮想技術を含めDell Technologiesが提供する。ネットワークやクラウドサービス、そしてMulti Orchestrator部分は、NTTグループの担当範囲だ。ちなみにMulti Orchestratorは、NTTの研究所が開発したシステムが利用されている。
今回の2社の協業について「1年半くらい前から話をしており、共同でのイノベーションとしては初めてのものとなります」と語るのは、Dell EMCのサービスおよびデジタルIT担当プレジデントのハワード・エライアス氏だ。まずはラスベガスで実証実験を行い、今後はこれを他の都市にも展開する予定だ。2ヶ月間ほど実験を行い、その結果をもとに商用化する。
NTTグループとしては、商用化の際にはシステムインテグレーション部分で収益を上げていくことになる。他には「スマートシティの仕組みは継続的に利用するものなので、プラットフォーム、インフラの使用量、さらにはサービスフィーをもらうことになります」。ラスベガス市の場合は、既に現地で利用しているネットワークを活用することになる。一方他の地域で展開する際には、NTTコミュニケーションズのネットワークを利用する場合もあるだろうとのこと。コグニティブ・ファウンデーションによるスマートシティの実現では、必要に応じNTTグループ、Dell Technologiesファミリーの全ての企業が関わり協業していくことになる。
また今回のスマートシティの実験では、マイクロデータセンターをIoTのセンサー近くに配置する。このマイクロデータセンターの実態はDellが提供するサーバー製品だ。ラスベガスでは市内に既に設置されているセンサーネットワークと、このマイクロデータセンターを接続し活用することになる。
「たとえば、イベント会場にあるセンサーを利用する際には、どれくらいの範囲に対しどのようにマイクロサーバーを置くのかといったことも検証します。マイクロデータセンターは、トランクサイズくらいのものになります。簡単にセットアップでき、取得したデータはコアのクラウドに送ります。その際にはプライバシーの問題もあるので、エッジであらかじめ処理してメタデータだけをクラウドに置くようにします」(澤田氏)
ラスベガス市では、既にビデオ装置がさまざまなところに配置されており、それをセンサーとして活用することになる。マイクロデータセンターについては、現地に設置し1日か2日でセットアップを完了できる。このようにポータビリティ性の高いエッジコンピュータを実現できるところは、今回の協業ソリューションにおける優位性の1つとなっている。