
当初はエネルギーを効率的に利用する街作りから始まり、今ではさらにIoTやAIなどの最先端技術を活用し人々がより安全で快適に暮らせる街を実現する、それがスマートシティだ。このスマートシティの実現のために、NTTグループとDell Technologiesが協業すると、2018年5月に発表された。両社は、2018年9月から米国ラスベガスでスマートシティ実現のための実証実験を開始する。
NTTがDellを選んだ1つの理由は仮想化インフラ

代表取締役副社長
澤田 純氏
日本電信電話株式会社 代表取締役副社長の澤田 純氏は、今回のスマートシティの実証実験では「リアクティブに現場の状況を把握し、そこからプロアクティブにさまざまな予測を行うものです」と言う。それをIoTの技術を活用し、柔軟に実現できるようにする。そのためにNTTグループとDell Technologiesが協業し「コグニティブ・ファウンデーション」という仕組みを提供する。
これはデータを蓄積して分析するクラウドから、IoTのセンサーデータを現場でも処理して活用するエッジコンピュータに至るまでの、仮想化されたICTリソース群をEnd-To-Endに「Multi Orchestrator」を用い連携させるもの。それにより迅速なICTリソースの配備と、ICTリソース構成の最適化を実現する。この仕組みでマルチドメイン、マルチレイヤ、マルチサービス/ベンダー環境においても、ICTリソースの最適化が図れるものになる。
このコグニティブ・ファウンデーションでは、仮想化されたICTリソースのインフラ部分を、VMwareの仮想技術を含めDell Technologiesが提供する。ネットワークやクラウドサービス、そしてMulti Orchestrator部分は、NTTグループの担当範囲だ。ちなみにMulti Orchestratorは、NTTの研究所が開発したシステムが利用されている。
今回の2社の協業について「1年半くらい前から話をしており、共同でのイノベーションとしては初めてのものとなります」と語るのは、Dell EMCのサービスおよびデジタルIT担当プレジデントのハワード・エライアス氏だ。まずはラスベガスで実証実験を行い、今後はこれを他の都市にも展開する予定だ。2ヶ月間ほど実験を行い、その結果をもとに商用化する。

Dell EMC
サービスおよびデジタルIT担当プレジデント
ハワード・エライアス氏
NTTグループとしては、商用化の際にはシステムインテグレーション部分で収益を上げていくことになる。他には「スマートシティの仕組みは継続的に利用するものなので、プラットフォーム、インフラの使用量、さらにはサービスフィーをもらうことになります」。ラスベガス市の場合は、既に現地で利用しているネットワークを活用することになる。一方他の地域で展開する際には、NTTコミュニケーションズのネットワークを利用する場合もあるだろうとのこと。コグニティブ・ファウンデーションによるスマートシティの実現では、必要に応じNTTグループ、Dell Technologiesファミリーの全ての企業が関わり協業していくことになる。
また今回のスマートシティの実験では、マイクロデータセンターをIoTのセンサー近くに配置する。このマイクロデータセンターの実態はDellが提供するサーバー製品だ。ラスベガスでは市内に既に設置されているセンサーネットワークと、このマイクロデータセンターを接続し活用することになる。
「たとえば、イベント会場にあるセンサーを利用する際には、どれくらいの範囲に対しどのようにマイクロサーバーを置くのかといったことも検証します。マイクロデータセンターは、トランクサイズくらいのものになります。簡単にセットアップでき、取得したデータはコアのクラウドに送ります。その際にはプライバシーの問題もあるので、エッジであらかじめ処理してメタデータだけをクラウドに置くようにします」(澤田氏)
ラスベガス市では、既にビデオ装置がさまざまなところに配置されており、それをセンサーとして活用することになる。マイクロデータセンターについては、現地に設置し1日か2日でセットアップを完了できる。このようにポータビリティ性の高いエッジコンピュータを実現できるところは、今回の協業ソリューションにおける優位性の1つとなっている。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
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