マイクロソフトがクラウドのビジネスを始めた当初、最も気を使っていたのがパートナーへの対応だった。顧客よりも、これまでマイクロソフトのビジネスを支えてきたパートナーとの関係性をどう作っていくのか。取材しているとそこにかなり注力し、気を使っているように見えた。実際クラウドの場合、製品を代理販売するビジネスモデルは合わない。さらに、従来パートナーに大きなビジネスを生み出していた、システムインテグレーションもほとんどなくなる可能性もあった。当然ながらパートナー自身も、引き続きマイクロソフトとビジネスができるのかに大きな不安があっただろう。
Azureの成長の高さは日本のパートナーとの関係性が上手くいっているから
そのような状況でスタートしたAzureのビジネスは、その後なんとかパートナーとの良好な関係性を築くことができた。結果、提供開始から8年ほどを経て、ビジネスは順調に拡大している。Microsoft Azureの売上は、直近で前年比100%の成長となっているのだ。
このような成果は、日本のパートナーとの関係性が上手くいっているからだと言うのは、日本マイクロソフトのパートナービジネス記者発表会に登場したマイクロソフトコーポレーション コーポレートバイスプレジデント One Commercial Partner担当のガブリエラ・シュースター氏だ。
シュースター氏は、日本と言えば「イノベーション」と「クオリティー」という2つの言葉を思い浮かべると言う。これら言葉が象徴するのが、日本の製造業の業務プロセス。それは世界の最先端であり、日本政府もそんな製造業のイノベーションを後押ししてきた。マイクロソフトも日本のパートナーと共に、日本の製造業が起こしてきたようなイノベーションの支援をしており、引き続きこの部分には力を入れていくと語る。
今後の日本については、東京五輪に向け大きなオポチュニティがあるとも指摘する。マイクロソフトとしては拡張性のあるクラウドプラットフォームを提供することで、東京五輪に訪れる数多くの人に新たな顧客体験を提供できる。東京五輪で顧客が得る経験は、完全なデジタルエクスペリエンスになる。「パートナーと一緒になってインフラ構築を支援し、新しい顧客体験を提供するお手伝いをします」とシュースター氏。
もう1つのオポチュニティが働き方改革だ。日本では政府も後押しして働き方改革を進めており、これもまたマイクロソフトのクラウドに大きなビジネスチャンスとなっている。
「日本の高齢化は危機的なものがあり、今後は大きく働き方を変えなければなりません。働き方を楽にし、より生産性を上げる必要があります。そのためにはロボティクス、AIを活用します。そうすることで、人材の最適な活用も可能になります。今は人が最も価値のある資源です。なので人には付加価値のある仕事に従事してもらい、付加価値のない仕事はロボットに任せてしまうのです。そういったことで日本の製造業のイノベーションのようなものを再び起こしていくのです」(シュースター氏)
3つめのオポチュニティとなるのが、日本政府が提唱している科学技術政策の基本指針「ソサエティ5.0」があるとシュースター氏は言う。これは「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く人類史上5番目の新しい社会のことであり、いわゆるインダストリー4.0などの新しいデジタルテクノロジーの革新により、新しい価値やサービスが生み出しそれにより人々に豊かさをもたらすもの。
このソサエティ5.0については、グローバルで4.5兆ドル、日本でも2,500億ドルのビジネスチャンスがあると試算されている。当然ながらマイクロソフトのパートナーにとっても、このソサエティ5.0で新しいソリューションを提供するチャンスが大きく広がっているとのことだ。