3レイヤーのすべてに対してサービスを展開する
最初に登壇した竹爪氏は、日本の企業は3つのことに頭を悩ませていると述べた上で、それがすなわちオラクルへの期待になっていると語った。
「1つ目は既存のシステムをクラウド化することです。多くのユーザーはクラウド化することでコストの最適化を図りたいと考えているのです。またクラウド化は生産性の向上にも寄与します。2つ目はクラウドプラットフォームを利用して新たなビジネスを迅速に立ち上げることです。3つ目はビジネスプロセスの効率化および迅速化です。ビジネスプロセスを単に効率化・迅速化するだけでなく、自社のビジネスに合わせて容易にカスタマイズできるサービスが求められているのです」(竹爪氏)
こうした要望に応えるため、オラクルはIaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Service)という3つのレイヤーでクラウドサービスを提供していくという。
「3つのレイヤーにおいてサービスを展開することが、クラウドベンダーとしての責務だと考えています。単にサービスを提供するだけでなく、ユーザーの要望に応えるため、クラウド自体を進化させていきます。IaaSレイヤーの場合、オンプレミスと同等以上の性能や拡張性、信頼性、セキュリティを担保することで、エンタープライズ向けのクラウドサービスを実現します。PaaSレイヤーの場合、迅速かつ最適なコストでサービスを立ち上げられるようにオートノマス(自律的)な機能を提供していきます。そしてSaaSレイヤーに関しては、単なるベストプラクティスの提供だけでなく、より深いインサイトや高い生産性を実現するための解としてAIを活用してきます」(竹爪氏)
エンタープライズデータの5割以上はオートノマスな形で管理される
竹爪氏に続いて登壇した、米オラクルのシッダールタ・アガルワル氏(Oracle Cloud Platform製品管理および戦略担当グループバイスプレジデント)は、多くの企業に共通する課題として、ソフトウェアを稼働させるところに高額の投資がなされており、そのコストがイノベーションに注がれていない点を指摘。一方で、セキュリティやAI(人工知能)、機械学習に対する投資のプライオリティが高くなっていると述べた。
「近い将来、エンタープライズアプリケーションの9割以上はAI搭載になるでしょう。自動車の自動運転などと同じように、AIの恩恵を享受できるのです。また、エンタープライズデータの5割以上は、オートノマスな形で管理されることになると思います。ITリーダーの実に86%が自律化・自動化への動きが不可欠だと考えているのです」(アガルワル氏)
こうした状況に対してオラクルは、ソフトウェアが「プラットフォームを自動的に管理する」「プラットフォームの構成やスケールアウトを行う」「プラットフォームのチューニングなども行う」といったことをビジョンとして掲げている。2020年代に向け、ソフトウェアがオートノマスになることを支援する種々のサービスを提供していくという。
一方、クラウドサービスを利用する多くの企業は、ITインフラをクラウド化するだけにとどまり、ソフトウェアを自社で管理するケースが目立つという。そのため、ITシステムの運用については自動化されず、バッチの適用やバックアップ、アプリケーションのチューニング、障害対応などは手動で実行することが多い。
こうした課題に対してオートノマスなクラウドプラットフォームでは、ユーザーが設定したポリシーに則してベンダーがAIなどを活用して運用を自動化し、ソフトウェアを管理する。アガルワル氏はこうした点を指摘した上で、同社が提供する自律プラットフォーム製品「Oracle Autonomous Cloud Platform」の優位性を次のように強調した。
「Oracle Autonomous Cloud Platformは自動稼働、自動保護、自動修復の3つを実現します。自動稼働ではプロビジョニング、スケール、バックアップ、リストア、アップグレードを自動化します。自動保護では、セキュリティのパッチを自動的に適用します。自動修復では、ITシステムが自システムを監視してチューニングを実施します。そうすることで高可用性を実現しています」(アガルワル氏)