Expert Captureは、同年4月初頭に独ハノーバーで開催された「HANNOVER MESSE 2019」にて発表されたもの。熟練作業者の技能伝承と、新人作業者のトレーニングを目的としている。すでにアーリーアダプター向けには200ユーザーを限定に、15万ドルで提供を開始している。日本での発売は同年5月9日を予定しているという。
説明を行った米PTCでVuforia(AR)担当 シニアディレクターのマット シェリダン(Matt Sheridan)氏は、「Expert Captureは、労働人口の減少と熟練作業者の高齢化による知識伝承に関する課題を解決するものだ。熟練作業者が持つノウハウを、ARを使って直接記録することで、(技能伝承ができないといった)ナレッジギャップを解消し、未熟な作業員でも理解できるARトレーニングコンテンツが短時間で作成する」とそのメリットを強調した。
Expert Captureは、PTCが2018年4月に買収したベンチャー企業Waypoint Labsが有する開発技術をベースにしている。米マイクロソフトの「HoloLens」や米リアルウェアの「RealWear HMT-1」といったARウエアラブルデバイスを装着した技術者が、実際に作業をしながら一連の動作を記録する。技術者の“視点”で見たモノを言葉(音声)で記録したり、作業状況をジェスチャーで確認したりできる。シェリダン氏は、「ウエアラブルデバイスはハンズフリーなので、場所や時間を問わず、すばやく記録できる」と説明する。
記録した内容はSaaS(Software as a Service)の専用編集ソフト「Vuforia editor」で編集が可能。汎用的な動画編集ソフトと同様に、ドラッグ・アンド・ドロップでデータ生成できる。手順全体に文字情報や写真、キャプションを付けたり、重要な作業の場面では他のメディアデータを追加したりできる。なお、生成したコンテンツは、スマートフォンやタブレット端末など、表示するデバイスに応じて最適化が可能だ。
シェリダン氏は、「例えば、HoloLensであれば、ハンズフリーで作業をしながら口頭で記録できる。これまで、作業マニュアルを作成する場合には、現場で記録した内容を紙に落とし込む必要があった。しかし、Expert Captureを活用すれば、作業現場という“実際の空間定義”の中で、その場で必要な作業内容を、熟練作業者の視点で記録できる。作業者は記録のために作業の手を止める必要がない」と語る。