サブスクリプションジャーニーを理解する
――まず、Zuoraが提唱している「サブスクリプションジャーニー」の紹介からお願いできますか。
桑野:サブスクリプションジャーニーとは、サブスクリプションビジネスの収益化の方法を示したベストプラクティスです(図1)。横軸が時間軸で契約の長さ、縦軸が顧客提供価値の金額を表しているのですが、どちらかというと横軸が重要です。それは一度解約されてしまうと、横軸はそれ以上伸びないからです。
通常は、Basicプランを申し込むと、使い込んでいくに従って、上位のGoldプランに移行します。オプション機能が追加されると、さらに多くの料金を支払ってくれることもあるかもしれません。一方、一番避けたいことは解約です。この場合、利用休止/再開のニーズや下位プランのダウングレードという選択肢を提供し、縦軸を伸ばし続けることは難しくても、横軸の契約期間を伸ばすことは可能です。例えば、ストレージサービスで10GBのプランを利用しているお客様がここ数カ月にわたり5GBしか使っていないとすると、解約のリスクが高まっていると判断できます。もし、10GBプランだけしかなければ、5GBのプランや3GBのプランを提供している競合に契約を奪われる可能性があります。でも、下位プランを提供できれば、そのお客様からの収益は減ることになったとしても、最悪の事態は免れることができるでしょう。
典型的なサブスクリプション契約では、時間の経過と共に顧客のニーズは変化します。つまり、常に顧客とつながり、縦軸の高さをアジャストしながら横軸を伸ばし、収益という面積を最大化することがサブスクリプションビジネスを収益化させるベストプラクティスになるわけです。
製造業とSaaS、メディア企業のサブスクリプションシフトが進む
――日本でサブスクリプションモデルの採用が進んでいるのはどんな業種でしょうか。
桑野:製造業とSaaSの二つです。この二つは2015年2月に日本法人を立ち上げた時から利用が多いですね。例えば製造業では、グローバルでビジネスを展開している複合機メーカートップ5のうち4社がZuoraを採用しています。リコーはその代表例で、オフィス周りの業務課題を解決するため、複合機とストレージサービスや会計、CRMシステムなどを連携するクラウドプラットフォームを提供しています。
また、ここ半年から一年で立ち上がってきたのがメディアです。日本法人設立から6年目に入りましたが、The Financial Times、The Daily Telegraph、The Guardianなど、英米主要メディアのほとんどがZuoraを使っているものの、日本のメディア企業の導入はそれほど進んでいませんでした。けれども、ダイヤモンド社が新サービスの「ダイヤモンド・プレミアム」を提供するにあたり、Zuoraを採用するなど、ここに来て変化の兆候が見え始めたと感じています。
製造業もメディア企業もビジネスモデルを変えないと、生き残れないという危機感が背景にあるのだと思います。