2012年にパット・ゲルシンガー氏がVMwareの新CEOに就任した際に掲げたのが、any cloud、any application、any deviceという3つの方針だった。これらを実現する方向性は、2020年の今も変わっていない。もともと強みであるデータセンター領域の仮想化サーバーソリューションに加え、顧客がさまざまなクラウドを使う時代になったことに応えるため、VMwareのプラットフォームは各種パブリッククラウドに対応している。
そのためオンプレミスと組み合わせたハイブリッドクラウドにも対応する。つまり場所を選ばず利用できるany cloudになっているのだ。その上でSoR、SoEのさまざまなアプリケーションの開発、運用にも対応し、さらにVMware上で動くアプリケーションに対し多様な端末から安全にアクセスできるany deviceのソリューションもある。この3つの要素にセキュリティを後付けするのではなく、あらかじめ内包させる“Intrinsic Security”も提供する。現状VMwareでは、この4つの要素で企業の新たなITシステムの要求に応えている。
VMware Cloudは主要なパブリッククラウドで動き、新たにKubernetesにも対応する
VMwareのマルチクラウドには、4つのタイプのサービスがある。「VMware Cloud Provider Program」は、パートナーによるVMware Cloudのマネージドサービスだ。VMware Cloudはマルチテナントでの運用をサポートしており、それを使い「日本でも多くのパートナーが、VMware Cloudのサービスを提供しています」と言うのは、ヴイエムウェア株式会社 チーフストラテジスト 高橋洋介氏だ。グローバルではMicrosoft Azure、Google Cloud、Alibaba Cloud、Oracle CloudでもVMware Cloudのベアメタルサーバーによるマネージドサービスが提供されており、顧客の選択肢の幅は広い。
2つ目のマネージドサービスが「VMware Cloud on AWS」だ。これはVMwareとAWSの協業により実現されたものだ。「双方の会社から200人ほどのエンジニアを出し、両社の技術を最適化しています」と高橋氏。サポートについても、AWSとVMwareが共同で提供することで、ユーザーは自分たちで問題の切り分けなどをすることなく、安心して利用できるサービスとなっている。
3つ目のマネージドサービスが、「VMware Cloud on Dell EMC」だ。これはDell EMCとVMwareが共同開発したもので、オンプレミス、エッジで「as a Serviceモデル」のインフラを利用できる。ハイパーコンバージドインフラであるDell EMCのVxRailの上にVMware Cloudのコンポーネント実装し、SD−WANのネットワーク経由でDell EMCがマネージドサービスの形で提供する。この3つで「企業が既に利用しているさまざまなワークロードを、網羅的に管理することができます」と高橋氏。VMware Cloudならば、オンプレミスにあるVMwareの仮想化サーバー環境に何ら手を加えることなくクラウド化できるメリットがあるのだ。
一方、新規のクラウドネイティブなアプリケーションについては、今後はコンテナやKubernetesの技術が数多く利用されるだろう。これについてVMwareでは、従来の仮想化サーバーと同じプラットフォームの上でKubernetesの環境を動かせるようにしている。「新しいアプリケーションの稼動環境としては、今後10年、20年というスパンでKubernetesが牽引することになるでしょう」と高橋氏。オンプレミスでもパブリッククラウドでも、さらにはエッジでもKubernetesベースの環境でアプリケーションが動くようになるだろうと言う。このKubernetesベースのアプリケーション稼動環境をいかに効率的に管理するかが、今後のIT部門の重要な課題だ。この課題に応えるために提供するのが「VMware Tanzu」だ。