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週刊DBオンライン 谷川耕一

2021年は「分散した働き方」のテクノロジーに注目

DaaS、ゼロトラスト、エンゲージメント、SaaSの注目ソリューション

 2020年から始まったリモートワークのニーズは、2021年になった今も衰える気配はない。再度の緊急事態宣言が発せられようとしている年頭に、新しい「分散した働き方」のためのソリューションがあらためて注目される。筆者が注目するのは、VDI、ゼロトラスト、クラウド認証基盤などのSaaS群だ。

 2020年を振り返ると、IT業界はリモートワークへの急ぎの対応に追われていた。特に緊急事態宣言が出された前半は、十分な準備ができないまま各社がリモートワークへの移行を余儀なくされ、VPNのゲートウェイがパンクしたりセキュリティが甘く情報漏洩事故につながったりと混乱をきたしたところもあった。

分散した働き方を実現するソリューション

 そのような状況の中、数多くの引き合いが発生していたのがVDI(仮想デスクトップ)だ。中でもVDIをパブリッククラウドから利用するMicrosoft AzureのWindows Virtual DesktopやAWSのAmazon WorkSpaces、VMware Horizon on IBM Cloudなどの話題はよく耳にした。これらDaaS(Desktop as a Service)は、新規に巨大なサーバーを用意する必要もなく、シンプルなネットワーク構成で利用できる。パブリッククラウドなので、必要がなくなればサブスクリプション契約を解除しコストの最適化も図れる。今後もDaaSへのニーズは続き、リモートワーク環境実現におけるキープレイヤーとなるだろう。

 DaaSと併せて話題になったのが、LANからのアクセスは安全とするのではなく、すべてが信頼できないことを前提とするゼロトラストネットワークだ。Google Cloudは10年以上にわたりゼロトラストネットワークに取り組んでおり、その経験を基に2020年に「BeyondCorpリモートアクセス」というサービスを開始した。これは社員や外部の人員がデバイスや場所に関係なく社内向けウェブアプリケーションに安全にアクセスできるようにするサービスだ。今後も各社から、ゼロトラストネットワークを実現するソリューションが提供されるだろう。

 とはいえ何か1つのツールさえ導入すれば、それでゼロトラストネットワークが実現されるものではない。現実は各種ツールを組み合わせ、運用ポリシーなども決め、徐々にゼロトラストネットワークを実現することになるはずだ。このゼロトラストネットワーク実現で、重要となるのがAzure Active Directoryのような認証基盤だ。中でも2020年に日本市場に本格参入したOktaは、注目株だ。複数のSaaSを利用している企業では、独立系のアクセス管理基盤のOktaの優位性が特に発揮される。Oktaについては、米国のカンファレンスイベントなどでは数年前からよく耳にしていた。これから日本でどのようにビジネスを拡大するか、注目したいベンダーだ。

分散した働き方を強力にサポートするSaaS群

 普段から積極的にSaaSを活用してきた企業は、大きな混乱もなくリモートワークを実現できたようだ。そしてSaaSで真っ先に頭に浮かぶのはSalesforce.comだろう。CRMやマーケティングオートメーションなど、顧客とのコミュニケーションを対象にしてきたSalesforceだが、ここ最近強化しているのが顧客だけでなく社内の従業員も含めたエンゲージメントの強化だ。その1つとしてSalesforceでは、コロナ禍での迅速な職場復帰を実現する「Work.com」を新たに提供している。また2020年の業界の最も大きな動きとして、Salesforceによる「Slack」の買収もあった。Slackで実現するのも社内外のスムースなコミュニケーションと言える。CRMを核にして社内外のコミュニケーション領域に進出するSalesforceの今後の展開にも、引き続き注意したいところだ。

 またSaaSのプレイヤーとしては、ServiceNowも元気だ。リモートワークを多くの企業が経験し明らかになったのが、はんこ出社に代表されるように社内プロセスがまだまだデジタル化されていない現実だ。ServiceNowは、社内の各種ビジネスプロセスのデジタル化を容易に実現できるSaaSだ。当初ServiceNowは、ITサービスマネージメントのSaaSとして知られてきた。しかし元々は、業務プロセスを自動化するプラットフォームとして開発され、1つの適用例としてITサービスマネージメント領域をパッケージ化し提供したものが評価された。現状Notesで実現していた社内業務システムなどの移行先としてもServiceNowは人気がある。今後の企業のデジタル化のプラットフォームとして、多くの採用が見込まれるだろう。

 もう1つSAP S4/HANAやOracle Fusion Cloud ERP、Microsoft Dynamics 365やOracle NetSuite、Inforなど、SaaS ERPの導入も本格化しそうだ。ERPが担う基幹系業務のクラウド化は、欧米に比べ保守的な判断をしがちな日本企業は出遅れていた感もある。それがリモートワークで出社をせずにバックオフィス業務もせざる得なくなり、多くの企業がリモートからも安全に使えるSaaS ERPのメリットを認識し始めた。

 実際、SaaS ERPを既に活用していたために、一切経理担当者が出社することなくリモートワークだけで期末の締め処理を実現した企業もある。こういった効果も次第に明らかになり、その上で迅速な導入や5年ごとの更新などを必要としないSaaS型のメリットが、日本市場でも認識されてきた。そのため2021年以降にERPアプリケーションの更新を迎える企業では、第一候補としてSaaS ERPを選択するところが多くなりそうだ。

 もう1つ今後活性化しそうな領域が、プロジェクト管理だ。これまでのプロジェクト管理ツールは、社内チームだけを対処にプロジェクトの進捗状況を管理するようなものだった。今後注目なのは、社外の人やチームも含め、分散した場所で働く人たちが共同で遂行するプロジェクトの管理を対象にできるものだ。この領域で注目されているのが「Asana」と「Wrike」だ。これらはまだ日本市場ではそれほど知られたツールではないが、外資系企業などを中心に利用が増えており、ユーザーからの評価は高い。今後日本で認知度が向上すれば、採用が進みそうだ。

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データ活用領域での注目はSnowflakeとDatabricks

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

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