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大和ハウス工業1万6000人以上の“仕事に集中できる環境”をどう守る? 鍵は「デジタルアダプション」

アビームコンサルティング×大和ハウス工業が示す「WalkMe」の導入効果

 戸建/賃貸住宅、分譲マンション建築などを手がける大和ハウス工業は、2021年から新たな勤怠システムを稼動。この新勤怠システム稼動と同時にデジタルアダプションプラットフォーム「WalkMe」によるガイダンス機能を利用している。導入を担当したアビームコンサルティングの坂本孝司氏が、大和ハウス工業 人事部の池田昇平氏と情報システム部の坂倉亘氏に対し、導入の経緯や効果を聞いた。

勤怠システム刷新を円滑に行うため、ガイダンスツールを導入

 大和ハウスグループは、住宅事業ハウスメーカーとしてスタートし、人や街、暮らしに関わる事業を展開している。グループ企業は、444社、全体の従業員数は48,807名、大和ハウス工業単体では16,712名が在籍している(2021年3月31日時点)。

 大和ハウス工業が新たに導入した勤怠システムは、日立ソリューションズが提供する人事総合ソリューション「リシテア」。プロジェクト期間は、2020年の6月から2021年の3月までの約10ヵ月だ。主な目的は、残業代などの未払いの防止、勤怠管理に係る従業員の手間の削減、フレックスタイム制度など柔軟な働き方への対応だという。そして、新たなシステム利用の負担軽減や労務管理のルール周知の目的で導入されたのが「WalkMe」だった。

 WalkMeは、ソフトウェアの利用方法をわかりやすく示し、円滑な操作を促しながら、利用状況の統計なども取得可能なデジタルアダプションプラットフォーム。社員の不安を解消し、自動化により業務を支援するなど、エンゲージメント向上や業務効率化をサポートする。

(左から)アビームコンサルティング デジタルプロセスビジネスユニット HCMセクター・執行役員プリンシパル 坂本孝司氏、大和ハウス工業 人事部 主任 池田昇平氏、同情報システム部 上席主任 坂倉亘氏
(左から)アビームコンサルティング デジタルプロセスビジネスユニット
HCMセクター・執行役員プリンシパル 坂本孝司氏
大和ハウス工業 人事部 主任 池田昇平氏
同情報システム部 上席主任 坂倉亘氏

 大和ハウス工業 人事部 主任を務める池田昇平氏は、「労働時間短縮の仕組みを今までと大きく変えたことで、基本的に本人が打刻を行わないで済むようになりました。一方で、勤怠システム自体の利用頻度が減ったために、WalkMeによる操作支援が必要だと感じました」と説明する。これまでの自己申告の打刻から、PCのログオン/オフ時間で算出する仕組みに変化しただけでなく、一部部門にはフレックスタイム制が新たに導入されたため、新たなルールを定着させる必要もあったという。

 また、情報システム部門としてもWalkMeを利用したいニーズがあった。大和ハウス工業 情報システム部 上席主任の坂倉亘氏は「ヘルプデスクへの問い合わせ削減という狙いがありました。新しい勤怠システムの変更は4月と、期初になりますので問い合わせの増加が見込まれています。そこで、WalkMeを導入することによって問い合わせ件数の削減を目指しました。さらに、設定が容易にできるため運用後に想定外の自体が起きた場合でも周知や回避策を提示できます。実際に、問い合わせが増えた場合でも、すぐにWalkMeで対処方法を提示することで、翌日からの問い合わせ件数を削減することができました」と説明する。

迷わせないインターフェースで、問い合わせの対応体制も構築

 実際に、大和ハウス工業が実装したWalkMeの機能は3つあり、1つ目は「吹き出し表示と自動入力」だ。操作ガイドに沿って吹き出しを表示させ、必要に応じて自動入力をする。ユーザーはガイドを選択することで必要な画面に遷移し、やるべきことを確認しながら入力できる。

ガイドにより入力をサポート
ガイドにより入力をサポート
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 また、2つ目に導入したのが「常駐ランチャー」。社内システムに誘導するガイドをボタン化したものや、他のシステムに誘導するインターフェースを用意した。これにより、問い合わせの多いものについては、ランチャー上でQ&Aに誘導するといった設定も可能だ。

アクセスが多いものなどは、常駐ランチャーで誘導
アクセスが多いものなどは、常駐ランチャーで誘導
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 そして、3つ目は「Smart Tips」であり、勤怠システムの各メニューにカーソルを合わせると補足説明を表示するなど、注意が必要な入力欄に説明を表示させる機能だ。

補足説明が必要な箇所には、Smart Tipsで注意喚起
補足説明が必要な箇所には、Smart Tipsで注意喚起
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 「WalkMeが“勤怠システムに関する情報の入り口”となるように意識しました。スケジュール管理システムやマニュアルへのリンク、制度説明のための情報を一元管理することで、従業員が迷わないように設定しています。また、ユーザーの声を素早くシステムに反映させるために、ヘルプデスクチームと連携することで、問い合わせ状況を即座に共有するための体制も作りました」(池田氏)

 さらに池田氏は、WalkMe自体に問題はないとした上で「導入前にどんなことができるかを体系的知っておけば、導入当初から活用の幅が広がったかもしれない」として、そのために導入事例など、自社での運用時に着想しやすい資料があるといいと付け加えた。

活用を定着化させるためには周知も重要に

 次に、WalkMe導入後の効果について、導入を担ったアビームコンサルティング デジタルプロセスビジネスユニット HCMセクター・執行役員プリンシパルを務める坂本孝司氏が、大和ハウス工業の従業員に対する調査結果を踏まえながら、WalkMeのインサイトデータを説明する。

 調査によると「ガイダンス機能があってよかった」と回答した従業員は86%、「勤怠システム以外でもガイダンス機能があったら便利」という回答は93%となっている。

従業員の半数以上が利便性を実感
従業員の半数以上が利便性を実感
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 「今回は試行期間を設けなかったため、従業員の皆さまに負担をかけた部分もあると思いますが、多くの方が『ガイダンス機能があってよかった』と感じてくれて嬉しかったです。一方で『まだ使い方がわからない』という声は多いのですが、その大半はWalkMeのガイダンスで解決できるものです。そのため、まずはガイダンスを周知させる方法を考えていきたいです」(池田氏)

 また、WalkMeのインサイトから得られたデータを基に、導入を開始した4月から6月までのデータが示された。「吹き出し表示・自動入力」が起動された回数は40万回、「常駐ランチャー」は13万回、「Smart Tips」による項目説明が表示された回数は460万回となっている。このとき、吹き出し表示・自動入力と項目説明について詳しく見てみると、6月に半減していることから、操作習得に寄与したという仮説が成り立つという

インサイト機能で使用頻度などを把握可能に
インサイト機能で使用頻度などを把握可能に
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 「勤怠管理は1ヵ月サイクルで運用していますので、2ヵ月目以降で起動回数が減ってきているのは、まさに予想していた通りでした。システムの習熟度が上がることによって企業全体におけるガイダンスの起動回数は減りましたが、普段あまり使用しない申請や、中途入社の方などが活用することを期待しています。ただ、ガイダンス機能自体に気づいてない方が一定数いますので、今後は啓蒙活動を行っていきたいと思っています」(坂倉氏)

 さらに、坂本氏はインサイト機能において、どのボタンがどれくらい押されたかの統計も出せるため、より細かなサポートに役立てられると補足する。

 従業員の負担軽減に加えて、もう一つの導入目的である新たな制度周知については、説明ページへのリンクという形でWalkMeを活用しているという。今後は、勤怠システムの機能を使うだけで自然と制度の理解も深まるような方向で実装をしていく方針だ。

 今後の活用について池田氏は「私は、WalkMeの利用が従業員の働きがい向上につながると思っています。働きがいを図る上で、仕事に対する誇りというものが指標としてあると考えています。本来の仕事以外に時間を取られてしまうと、その誇りが低下するのではないでしょうか。WalkMeを活用することで、本来の仕事に集中できる環境が整うと思っています」と語る。

 また、情報システム部門の視点として坂倉氏は「大和ハウス工業だけで計約1万6,000人以上の従業員がおり、ITリテラシーも様々です。システム導入には、いかにわかりやすく誰もが使えるものというのが前提でした。WalkMeがあれば、システムと使いやすさを切り離すことができますので、システム本来の目的である効果効率化と大和ハウスが前提とする『全員が簡単に登録できる』という、両方を満たした運用ができるのではないかと考えております」と述べる。

 なお、今回のWalkMe導入はアビームコンサルティングが行ったが、プログラミング知識のない池田氏も多くの設定を行なったという。IT知識がなくても利用できる、設定管理が難しくないというのもWalkMeの特徴であり、同社は今後もより一層の活用を目指していくとして講演を終えた。

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