他社を真似るな、変革を“自分ゴト”として創出せよ
他社の真似をするような形でデータ活用を進める企業は、それほどデータ活用が進んでいない。一方、自らで当事者意識を持ち、ビジネスの新たな土台としてデータ活用に取り組み、特にリーダーシップを発揮する社長やCDO(Chief Data Officer, Chief Digital Officer)などが率先している企業ではデータ活用が進んでいる。取材冒頭、企業における実情について田口氏は指摘する。
ITシステムを財務諸表の作成などにしか利用できていない企業は少なくないだろう。しかし、それだけでは過去の状況は見えたとしても、他社との差別化にはつながらない。「これまでの取り組みを否定しませんが、現状の新しい考え方の下に“新しい情報系システム”を構築する必要があります。その上で、単にシステムを刷新するだけでなく『どう活用すれば差別化を図れるか』を明確に考え、実際に構築できている企業が現れています」と田口氏。
当事者意識を持ち、新しい技術と考え方を吸収することで変革を遂げようとする企業は、ここ半年だけでも増加傾向にあり、『DMBOK』や『CMMI(Capability Maturity Model Integration)』のような方法論を用いて“変革への道筋”を探っているという。もちろん、それらの方法論が必ずしも正解ではないことも意識しており、「たとえば、データを管掌する組織については、IT部門とは別に経営企画が主導的に進めている企業もあり、データ活用が圧倒的に進んでいます」と田口氏は述べる。基幹系システムを単にリプレイスするような従来型の発想ではなく、新しい考え方の下で情報系システムを作り上げることで競合他社と大きく水をあけている企業が増えているという。
スプレッドシートなどを用いて、個別に情報をハンドリングしている企業は少なくないだろう。しかし、それを行うのは財務や経営企画部門などの“数字に強い人”だけ。加えて、取り扱う数字が実際のビジネスとは乖離している数字であることも多い。そのような状況を変えるためには、既存の基幹システムの在り方を変え、情報系システムも新たに作り直すことになる。
また、データウェアハウスやデータレイク、データマートなど、データ活用における多くのキーワードもある。前述したように、情報系システムを作り直す際には、それらを意識しながらも各種ツールをどう使いこなすかという観点も必要だ。実際に取り組むことで意識が変わり、自ずとアジャイルのような感覚が組織に定着し始めるだろう。その際、リスキリングやアジャイルなどの方法論が存在しているため、それらを適宜取り込むことも重要だ。
もちろん、方法論は絶対的な正解ではないがリファレンスであり、“正解に近い”やり方である。そのことを経営層や現場の担当者に強く醸成させると取り組み方にも変化が生まれ、限られた条件下かもしれないが、建設的に物事を捉えて“ゼロ”から作り直すような意識が生まれるという。
たとえば、大手のIT企業やITコンサルタントに「これが正解だ」と言われたように、“他社と同じこと”をやる。これで得られる成果は、せいぜいコスト削減くらいだろう。つまり、DXの主目的であるビジネス変革には至らない。対して、前述したような形で取り組みを進めている企業では、この半年で大きな伸長がみられるとして「来年には、数字として明確に表れてくるでしょう」と田口氏は語る。