情報の共有はメールやグループウェアだけではできない
情報を共有し、活用する。企業ではこの課題を解決するために、文書管理システムやグループウェアなど、さまざまな仕組みを導入してきた。しかしうまく活用できている企業は意外に少ない。なぜうまく活用できないのか。日立システムアンドサービス プロダクトソリューション本部第1アプリケーション基盤ソリューション部主任技師の松本匡孝氏は、その理由を次のように説明する。
「第一に内部統制によりアクセス権が過剰に設定されてしまったこと。第二に情報のディレクトリは管理者のポリシーで行われ、ユーザ視点で容易に探し出すことが困難なこと。第三に本来は伝達手段であるメールを、コラボレーション手段として多用していることが挙げられます」(松本氏)。松本氏自身も、以前はメールをコラボレーション手段に多用していたという。
メールでのコラボレーションの欠点は、履歴が残らず、情報の欠落が発生すること。また、情報は個人のメールフォルダ内のみに蓄積され、その人が異動してしまうと、組織には情報が残らない。つまりメールでは、知識やノウハウはあくまでも属人的なもので、組織として貯めることには適していない。
しかし一歩外に目を向けると、情報の共有・活用がうまくいっている世界がある。それがインターネットの世界である。個人の知識や情報はブログで公開され、ソーシャルブックマークを使えば、有益な情報をみんなで容易に共有できる。
あることについて調べたいと思った場合は、Wiki(ウィキ。Webブラウザを使ってWebコンテンツの編集などを行う管理システム)サイトを検索したり、困りごとについて相談したいと思ったときは、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のコミュニティなどで意見を求めたりすることができる。つまりブログ、Wiki、SNS というWeb2.0 のソーシャル技術を応用すれば、企業の中でも情報の共有・活用が進むことが想定される。それを実現したのがInWeave(インウィーブ)なのである。
ビジネスログ、SNS、Wikiの3つの機能を提供
InWeave はSNS やブログ、Wiki というWeb2.0 技術を用いて、各社員の知恵や経験などの暗黙知、企業内にある業務知識やノウハウを、組織の情報として共有・活用するためのコラボレーション基盤である(図1)。提供する機能はビジネスログ(ブログ)、SNS(コミュニティ)、Wiki の3 つ。
第一のビジネスログ機能は、通知・通達、報告業務、議事録など主に業務に関する情報を蓄積、共有、活用の場を提供する。業務情報の入力ではテキストだけでなく項目を固定したフォームを定義したり、各種API を提供することで既存の業務システムとの連携も実現できる。
またアクセス権の設定は、メンバー単位はもちろん、組織単位で権限設定が可能だ。参照権がなければ、ブログの存在自体知ることができない。またビジネスログの良さは、関連する記事やコメントが同じページに時系列に表示されること。そして投稿する記事にはタグを付けられるので、検索性も高い。さらに新着・更新記事は、PUSH配信で通知されるので、メールのように共有漏れがない。
第二の機能であるSNSは、社員間の交流やコミュニケーションを行う場を提供する。「これを使うことで、組織を超えた情報共有が可能になります」(松本氏)。コミュニティ機能は、コンテンツの公開制御を行いつつもコミュニティの概要が全ユーザに公開される。例えばデータベースというコミュニティを立て、質問を投げかければ、OracleやSQL Serverなどに関する社内の知識やノウハウが集まる可能性があるというわけだ。
第三のWikiは、マニュアルや内規、社内百科事典、プロジェクトの成果報告書の作成など、複数のメンバーで共同編集をする際に便利な機能である。「実はこのWiki 機能は、独立したWiki だけでなくSNS内でも提供されている機能です。コミュニティ内のディスカッションで集まった情報や知識をメンバーが共同で編集することで、目的に沿った百科事典やノウハウ集を作ることが可能です。またWikiでは、アンケート機能も提供しており、プルダウンやラジオボタンにより、投稿に消極的なユーザの敷居を下げる効果も狙えます」 (松本氏)。
これら提供されている機能からも分かるとおり、「InWeaveはグループウェアの置き換えになるツールではなく、グループウェアだけでは難しかったコラボレーションを補完するためのインフラです」と松本氏は強調する。もちろん企業で利用するためのセキュリティレベルも満たしている。