個人や専門組織が単独で動いても、DXは成功しない
井無田仲氏(以下、井無田):2021年から、コスモエネルギーホールディングスのCDOとしてグループ全体のDXを推進する立場にいらっしゃいますが、CDOとしての知見やスキルはどのように磨いてこられたのでしょうか。
ルゾンカ典子氏(以下、ルゾンカ):私はアメリカの大学に留学後、そのまま大手自動車保険会社のR&D部門で顧客・商品分析を経験すると、2006年に帰国して日本でキャリアを重ねてきました。いくつかの業界を経験していますが、共通して手がけてきたのが「データを分析して、ビジネスに活かす」こと。そこから派生して分析チームの立ち上げや、社内コンサルのように各種プロジェクトを支援する役割をこなして、今に至ります。
井無田:元々データを扱うことは得意だったのでしょうか。
ルゾンカ:大学で研究助手をしていたとき、「データをいじるのが苦ではないし、周囲の人よりも得意」だと気づいたのです。そういう意味では、私のキャリアの入り口は、学生時代だった気がしますね。
また、チームで仕事をする大切さを学んだのも、学生時代のアルバイトです。ピザのデリバリー店でのリーダー、デパートの販売員などで学んだのは「成果は一人では出せない」ということ。“得意な仕事”は得意な人に任せ、最適なフォーメーションを組むという発想は、DXを推進する立場でも活きている、非常に重要な指針になっています。
井無田:つまり、「DXはどれだけ人を巻き込めるかが大事」ということでしょうか。
ルゾンカ:そうですね。私一人で頑張っても成果は限定的になりますし、DX推進の専門部隊がどれだけ動いても、肝心の社員が主体的に参加してくれなければ会社は変わりません。「全員参加型」がコスモのDXにおける大方針です。
井無田:企業のDX推進に多く携わっていますが、「DXには全員が参加すべき」というのは、言うはやすく行うは難しですが、実現できている企業は少ないと感じます。
ルゾンカ:シンプルに考えてみてください。みんながやる気を出してくれるのは、「やらざるを得ないほど切羽詰まっている」ときか「楽しいからやりたい」ときのどちらかですよね。それなら、後者のほうが良いに決まっています。だからこそ、コスモエネルギーグループで働くすべての人に「DXを楽しい」と感じてもらい、主体的に参加してもらうための仕組みや環境の整備にこだわってきました。“ポジティブに進めていく”ことが成功の鍵です。