ドキュメントの「タグ付け」「マスキング」を生成AIで自動化
具体的には、これまでのように営業担当者が自分の足で時間をかけて情報を収集する代わりに、システムを通じてほしい情報を素早く検索し、最小の手間と最短の時間でアクセスできる仕組みの実現を目指した。早速何社かのベンダーにソリューションの提案を依頼し、返ってきた提案内容を比較検討するとともに、有力なサービスについてはデモを依頼したり、社内で検証作業を行ったりしたという。
その結果、最終的にLayerXの提案を採用。その理由について木村氏は、「他社の提案はSaaSをベースにしており、カスタマイズの幅に制約がありました。一方、LayerXの提案にはそうした制約がなく、私たちのニーズに最も柔軟に対応してもらえそうだと判断しました」と語る。
早速開発プロジェクトを立ち上げ、木村氏を中心とする三菱UFJ銀行側のメンバーと、LayerXの技術担当者が密接に連携しながらシステムの設計・開発を進めていった。初回リリースでは、既存の営業提案書をデータベースに登録し、それらをキーワードやタグ情報を基に素早く検索・閲覧できる機能の実装を進めている。
なお、登録された提案書のドキュメントファイルには、他の営業担当者の目に触れてはいけない情報も含まれているため、これらに“マスキング処理”を施す必要があった。このマスキングの対象となる情報を自動的に抽出し、マスキング処理を行う部分に生成AIを活用。また、ドキュメントの内容を精査して適切なタグを付与する処理フロー、各ドキュメントの内容を要約して検索結果に表示する機能においても生成AIを活用したという。
これらの機能は旧来のAI技術を使っても実現可能ではあるが、生成AIを使うことで従来より簡単に機能を実装・カスタマイズできるとLayerX 部門執行役員 AI・LLM事業部長 中村龍矢氏は語る。
「たとえばタグの種類や粒度を変更したり、マスキング処理の対象を追加したりするような場合、従来のAI技術ではその都度新たにモデルの学習を行わなければなりませんでした。しかしLLMであれば、プロンプトに変更を加えるだけで、比較的容易に仕様を変更したりチューニングを行ったりすることができます。今回のように適宜修正を加えながらソリューションを構築していくアジャイルな開発手法には、LLMは極めて適していると言えます」