他部署にも横展開、「生成AIによる提案書の自動生成」を目指す
実際の開発作業は、LayerXが提供する生成AIプラットフォーム「Ai Workforce」を用いて行われた。同製品を用いることで、複雑なプログラミングやプロンプトエンジニアリングを行うことなく、ツールのGUI上でモジュールを組み合わせていく手法で素早くシステムを構築できたという。
また、マスキング処理の精度を向上させるためのチューニング作業も、Ai Workforceを採用したことで大幅に効率化できたと中村氏は語る。
「当社はプライバシーテック分野のソリューションを数多く手掛けてきた経験があり、そのノウハウを今回のマスキング処理にも生かしています。マスキング処理を必要とするドキュメントの種類は業界ごとに異なっており、それらに個別対応するとなると多くのコストと時間がかかります。その点、LLMとAi Workforceの組み合わせならば、そうした作業を大幅に効率化できるため、マスキング処理実装の効率やスピードに大きな変革をもたらしたと思います」(中村氏)
なお、開発プロジェクトは予定通りにカットオーバーし、2024年10月1日に本番リリースを迎えることができた。本稿執筆時点(2024年10月)ではリリースから間もないものの、早くも営業現場からは好意的な反応が寄せられているという。
「このシステムのリリースを社内で発表したときには、『まさにこういうのを待っていたんだよ!』という声を多くいただきました。現時点ではまだリリースしたばかりの段階ですが、既に数十件分の提案書が登録されており、多くの営業担当者がここから提案書を検索・参照して日々の提案活動に活用し始めています」(木村氏)
ただし、現在の利用法はあくまでも暫定的なものであり、今後も生成AIの技術進化にアンテナを張りながら最新技術を取り込んでいく。最終的には、当初もくろんでいた「生成AIが自動的に提案書をサジェストしてくれる」という段階まで持っていきたいと木村氏は抱負を語る。
「今後はこの仕組みをコーポレートバンキング事業本部だけでなく、他の事業本部やグループ企業に対しても横展開していくとともに、足りない機能の実装や精度のさらなる向上を図っていきます。そして中長期的には、やはり生成AIによる提案書の自動作成をぜひ実現したいと考えています。100%の完成度のものを生成するのはさすがに無理でしょうが、たとえ50%、60%のドラフト版であっても自動生成できれば現場にとってのメリットはとても大きいでしょうから、ぜひLayerXさんの力を借りて実現させたいですね」