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ベンダーが開発したプログラム、ノウハウやロジックが詰まったソースコードはユーザーに引き渡されるべき?

 本連載では、システム開発における様々な勘所を、実際の判例を題材として解説しています。今回取り上げるテーマは、「ベンダーが開発したプログラム、ノウハウやロジックが詰まったソースコードはユーザーに引き渡されるべき?」です。ベンダーは開発したプログラムのソースコードを、顧客であるユーザーに引き渡すべきなのか。プログラムの著作権は、原始的には作成者であるベンダーにありますが、出来上がったシステムは発注者に譲渡されるのが一般的です。しかし、なかには著作権を「ベンダー側に留保したい」と考える方もいらっしゃるでしょう。今回は、実際にそうした論点で起こった裁判事例を見ながら、発注者とベンダー側の双方が押さえておくべき注意点を考えます。

ソースコードをユーザー側に引き渡す必要はあるのか?

 私自身もベンダーサイドとして経験があるのですが、「開発したプログラムのソースコードを、顧客であるユーザーに引き渡す必要があるのか」という問題が時々発生します。

 カスタム開発の場合、おそらく通常はソースコードを発注者に引き渡すことが多いと思います。プログラムの著作権は、原始的には作成者であるベンダーにありますが、システムは完成した時点で発注者に譲渡されるのが普通ですし、契約書にもそのように書かれることが多いです。

 ただ、ソースコードにはベンダーが頭を捻って考えたノウハウやロジックが埋め込まれている場合もあり、そうした際には著作権をベンダー側に留保したいと考えられる場合もあります。私が経験した時もそうでしたが、その場合には費用を一部減額して、発注者にソースコードを渡さずに済むよう契約することもあります。

 また、政府が民間のベンダーに開発を依頼する際、その著作権をベンダーに留保して活用してもらうことが「経済の活性化や科学技術の発展に貢献する」と判断する場合には、あえてソースコードの権利譲渡を求めない「バイドール契約」というものを結ぶことがあります。

 いずれにせよ、ソースコードを発注者に引き渡すかどうかは、その後のベンダーと発注者双方の経営にも影響することですので、慎重に検討し合意すべきでしょう。今回は、そんなソースコードの引き渡しを巡る紛争についてご紹介します。

次のページ
ソースコードの引き渡しは「できない」とするベンダー

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この記事の著者

細川義洋(ホソカワヨシヒロ)

ITプロセスコンサルタント東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員1964年神奈川県横浜市生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。大学を卒業後、日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステムの開発・運用に従事した後、2005年より20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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