AWS基盤を活かした新たな挑戦──高価値商品にNFTを搭載
サントリーでは、社内のITシステムのモダナイゼーションを進めると共に、システムと連携した新しいデジタルサービス活用にも取り組んでいる。その一つが「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉2024」のボトルに、NFC(近距離無線通信タグ)を搭載するパイロットプロジェクトだ[1]。ボトルのキャップを覆うテープを切ると、NFCが検知し、顧客は消費の証明となるNFT(代替不可能なトークン)を受け取ることができる。
このサービスには、AWS Key Management Service、Amazon Virtual Private Cloud、AWS CloudFront、Amazon RDS、Elastic Load Balancing、AWS Security Hubなど、様々なAWS サービスを使用している。
Suntory Business Expert APAC Managing Director Sebastian Zilliacus氏は、このサービスについて次のように説明する。
「消費者につながることを大事にしているので、ブロックチェーンというテクノロジーを使用しています。お客様側から見てシンプルであることを重視しました。スマートフォンに標準搭載されているNFCを使うだけでできるので、新たにアプリをダウンロードする必要はありません」(Zilliacus氏)

Suntory Business Expert APAC PTE. LTD.
Managing Director Sebastian Zilliacus氏
消費者にとってシンプルな仕組みとなるが、サントリーは取得した顧客の名前、Eメールアドレスなどに関しては守るべき個人情報となる。
「このNFTがどこの誰のアカウントに結びついているかっていう情報に関しては、しっかりと守る必要があります。この個人情報に関しては、AWSの方でデータをしっかり守っていただける仕組みを持っていることで、安心して利用できます」(Zilliacus氏)

NFCが付帯された「ザ・プレミアム・モルツ マスターズドリーム〈山崎原酒樽熟成〉2024」(左)、NFCで読み取った画面(右)
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こうした変化を実現しながら、小山氏は「ITインフラに関しては、マルチクラウド対応にも取り組んでいきたいと思います」と話す。メインのクラウドにAWSを選択したにもかかわらず、マルチクラウドを試行するのはどういう理由からなのだろうか。
「ハイパースケーラーのクラウドにはそれぞれ得意分野があります。それを理解し、必要な場合にはそれを利用することができる体制にしたいのです」(小山氏)
様々な可能性に対応しながら、サントリーのクラウドシフト、モダナイゼーションが進められていくようだ。
[1] Avalanche-Japanese「サントリーグループ、アバランチブロックチェーンでトークン化された『ザ・プレミアム・モルツ』ビールを発売」(2024年11月20日)