2025年2月12日、オラクルはOracle Fusion ApplicationsのAI戦略を発表、データモデル・組み込み型・垂直統合アーキテクチャの3本柱で展開。AIエージェントは言語・コンテキスト・アクション・推論の4要素で構成され、セールス・サプライチェーン・HCM分野で50以上のユースケースを提供開始した。追加コストなくクラウドサブスクリプションに含まれ、業務プロセスの自動化による生産性向上と顧客体験改善を実現するものだ。
Oracle AIの3つの戦略:データモデル・組み込み型・垂直統合アーキテクチャ

Oracle AIは、オラクルのエンタープライズソフトウェアスタック全体に組み込まれていることを特徴としている。そのスタックは4つの層で構成されている。まず、一番下がAIモデルをトレーニングするための「インフラ」で、その上がベクトルデータベースを含む「データベース」、さらにその上にAIエージェントや生成AIアプリケーションが利用する「AIサービス」、一番上が「SaaS」である。ナッシュ氏は、Fusion ApplicationsにおけるOracle AIの戦略のビジョンを、「お客様に信頼されるAIパートナーとなること」と紹介し、「企業が業務で使うFusion Applicationsに、AIを組み込むことでこのビジョンを実現する」とした。
Oracle AIの戦略の柱は3つある。第1の柱はデータで、企業が質の高いデータから最高の成果を得られるような企業データへのアクセスを提供する。Fusion Applicationsでは、会計から人事、サプライチェーン、マーケティング、営業、カスタマーサービスまで、一つのデータモデルを共有している。データプライバシーを担保しつつ、企業が最も重要で信頼できるデータにアクセスできるようにすることを重視している。
第2の柱は組み込み型であることだ。クラウドサブスクリプションに、追加コストを支払うことなく、AI機能を使えることとの関連と意義をナッシュ氏は強調した。背景には、顧客のAI活用に伴うコストの懸念と、利用に向けての心理的障壁を下げることへの期待がある。オラクルが業務へのAI機能の実装をテストすることになるため、顧客自らが実装の負担を負う必要もない。
「クラウドサブスクリプションは、AIエージェントが動く範囲のすべてをカバーする。GPUインフラ、推論を行う大規模言語モデル(LLM)、組み込みプロンプトなど、すべてがFusion Applicationのクラウドサブスクリプションに含まれている。オラクルが運営するOracle Cloud Infrastructure(OCI)からLLMをホスティングしている。データベース、AIサービス、SaaSをOCIが支える形態なので、SaaSの顧客に組み込み型エージェントAIを提供する上で最も合理的なアプローチを採用している」とナッシュ氏は説明した。
第3の戦略の柱が、垂直統合型のアーキテクチャーで、インフラからアプリケーションまでをオラクル単独で包括的に提供できることだ。OCIからLLMをホストする際、インフラストラクチャーの一部としてそれぞれのユースケースに最適なモデルを選択し、顧客へのオファリングに組み込み、AI機能を提供している。

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)
IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...
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