2025年3月14日、PagerDutyは、AIと自動化がビジネスに与える影響を示す「2025年版システム運用の現状に関する調査結果」を発表した。
同調査は、北米、欧州、中東・アフリカ(EMEA)、アジア太平洋および日本(APJ)の年間収益5億USドル(約740億円)以上の企業に所属する1,100以上のIT運用リーダーを対象に実施。調査結果は以下のとおり。
日本企業のシステム運用の現状
過去12ヵ月で、約66%の日本企業がシステム運用の成熟度を向上させ、約67%が運用のレジリエンスを強化していると明らかになったという。しかし、グローバルでは約73%が「システム障害発生時に耐えうる体制が整っている」と回答したのに対し、日本企業は約58%にとどまり、運用面での不安が依然として残っているとのことだ。
障害発生時の対応には、システム運用の自動化が鍵を握ると同社は述べる。しかし、「首尾一貫したIT自動化戦略がある」と回答した日本企業は約60%にとどまり、グローバル(約73%)との差が見られたという。また、12ヵ月前と比べて自動化を効果的に活用できている企業は、日本では約64%、グローバルで約74%という結果になった。

「信頼できるデジタル顧客体験(社内外のユーザーに対して)を提供している」と回答した日本企業は約61%、「自動化を推進し、より多くのリソースを開発側にシフトすることで、新サービスなどの市場投入のスピードを改善した」と回答した日本企業は約60%と、グローバルと比較して遅れを取っていることが示唆されたという。
こうしたギャップを埋めるため、日本企業の約71%が2025年のIT運用予算を前年比で増加させると回答。特に「プロセス・ワークフローの自動化(約68%)」が最も投資額を増やす分野として挙げられ、日本企業がシステム運用の自動化の遅れを認識していることが明確となったとしている。次いで、「生成AI(約67%)」「AIエージェント(約66%)」とAI技術に対しても投資意欲が高いことがわかった。

また、AI活用の優先分野として「顧客サービスの自動化/パーソナライゼーション(約55%)」「プロセス・ワークフローの自動化(約53%)」「DevOpsの自動化(約45%)」がトップ3として挙げられ、日本企業はより高度な自動化による運用効率の向上を目指していることが示されたとのことだ。

日本企業が自動化の拡大を阻む最大の障壁として、「自動化に関するデータセキュリティ上の懸念(約38%)」が挙げられたという。これは、自動化のプログラム自体に入りうるセキュリティ脆弱性や自動化プログラムの誤処理によるリスクを懸念していることが考えられるとのことだ。次いで「自動化の推進に必要なスキルのトレーニングや、自動化を推進できる人材の採用(約34%)」となり、セキュリティ強化と人材確保が自動化推進の鍵を握ることが示されたという。

システム運用におけるAI活用の現状と課題
同調査で、多くの企業でAIの成熟度が進み、AIをより効果的に活用していることが明らかになったと同社は述べる。
日本企業の約65%はAI成熟度を「最適化」または「革新」と評価し、12ヵ月前と比べて約70%が「AIをより効果的に活用できている」と回答。特に、「データから得られるインサイトの質の向上(約45%)」「業務効率の向上(約43%)」「社員がより付加価値の高い仕事へ集中できる(約38%)」などの生成AI導入によるメリットを実感しているとのことだ。実際に戦略的にAI導入が開始され、費用対効果が出始めている企業もあり、AI技術の重要性が高まっているという。

一方で、日本企業によるAIの展望について懸念される点も明らかに。「デジタル運用においてAI活用のユースケースを確立している」と評価した日本企業は約59%にとどまり、グローバル(約75%)との乖離が見られたという。
また、2024年以降、AI技術を進めたAIエージェント技術が急速に台頭。同調査によると、日本企業の約90%が「AIエージェントは今後のIT運用において中核または補助的役割を果たす」との見解を示し、グローバル(約88%)を上回る期待感が見られたとのことだ。

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