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ピースは揃った──IBM×Red Hat×HashiCorpが描く新戦略、拡大するポートフォリオ

買収後の連携、AI時代のDXを加速させるのか?

Red Hatが築いてきた優位性 IBMとの協業でどう生かすのか

 Red Hatは、RHELによるハードウェアの抽象化から、OpenShiftのコンテナによる“クラウドの抽象化”へと、プラットフォームの抽象化レイヤを進化させてきた。そう説明するのは、レッドハットの北山晋吾氏だ。

レッドハット テクニカルセールス本部 クラウドスペシャリストソリューションアーキテクト部の北山晋吾氏
レッドハット株式会社 テクニカルセールス本部 クラウドスペシャリストソリューションアーキテクト部 北山晋吾氏

 OpenShiftは、多様なアプリケーションの可搬性を高めるコンテナ基盤として、既に市場で広く採用されている。IBMによる買収で協業が始まった当時、黎明期のコンテナプラットフォームを巡っては、多くの企業がエンタープライズ市場へのアプローチに課題を抱えており、Red HatはIBMの強力な顧客基盤とビジネス知見を得ることで、これを補完してきた。

 今やコンテナはプラットフォームレイヤの標準となり、同領域のビジネスでIBMとRed Hatは強力なコラボレーションを築いている。そして上位のAIレイヤでも、「エンジニアリングレベルまで踏み込み、共同開発したソリューションやツールを展開している」と北山氏は話す。

 AIワークロードにおける一般的なユースケースとして、AIの学習、特にInstructLabによるチューニングには「RHEL AI」を、モデルのデプロイや推論環境にはOpenShiftを使用する。さらにOpenShift上には、AI開発パイプラインや自動化ツールを稼働させる「Red Hat OpenShift AI」という仕組みも整備してきた。つまりRed Hatは、AIアプリケーションに必要とされる多様なコンポーネント(セキュリティ、認証、自動化など)を、IBMのコンポーネントと組み合わせた形で提供できる。これは両社がオープン性を志向したことによる、連携の成果と言えるだろう。

運用の自動化は人手不足の解消にも貢献する

 IBMとRed Hatが進めるAI領域での協業は、両社にとって「AIの信頼性向上」と「オープン化」という共通目標の追求だ。Red Hatから見れば、IBMが長年取り組んできたエンタープライズAI市場での機会を拡大する好機であり、IBMにとっては、Red Hatのオープンソースやコミュニティ運営の経験を活用し、AI事業におけるエコシステムを大きく拡大できるメリットがある。

 日本IBMの平山毅氏も「IBMは生成AIの領域でも、オープンな方向に舵を切っている。また、一般的に生成AIというと自然言語での対話などを思い浮かべるが、コード生成などのAI開発・運用にも力を入れている」という。

日本アイ・ビー・エム 事業部長 エコシステムテクニカルリーダーシップ エグゼクティブ・アーキテクト テクノロジー事業本部 エコシステム共創本部 次世代AI半導体データセンターの平山毅氏
日本アイ・ビー・エム株式会社 テクノロジー事業本部 エコシステムテクニカルリーダーシップ  平山毅氏

 ユーザーにとっては、IBMの信頼性やビジネス知見と、Red Hatのオープンなイノベーション推進力をAI活用に生かせる点がメリットだ。特に事業におけるAI活用では、IT部門とビジネス部門の連携が不可欠であり、IBMのビジネスソリューションとの組み合わせは成功の鍵となるだろう。また、IBM製品がOpenShift上で稼働することで可搬性が向上し、オープンスタンダードに準拠した製品へと変化している点も、顧客にはメリットとなる。

 現在、AI開発・運用における具体的な連携施策として「IBM watsonx Code Assistant for Red Hat Ansible Lightspeed」が提供されている。これはRed Hat Ansible(以下、Ansible)の自動化コード(プレイブック)をAIが自動生成するツールで、特定のユースケースにおける高精度なコード生成を目指しているものだ。既にLightspeedはIBM社内の生産性向上に貢献しており、顧客からの引き合いもあると田中氏は語り、IT運用の効率化や人手不足解消への貢献に期待を寄せる。

 また、AIが生成したコードを安全に実行するための仕組み「ポリシー・アズ・コード(Policy as Code)」も、Ansibleコミュニティで開発が進められてきた。LightspeedのようなAIと運用自動化の連携には、InstructLabよりも早い段階で取り組んできたこともあって、既に現場で成果を上げつつある。これは障害発生時の迅速な復旧、セキュリティインシデントへの対応など、未知の事象への自動対応を可能にし、運用のあり方を大きく変える可能性があると、レッドハットの飯田敏樹氏は話す。

レッドハット APACテクニカルセールススペシャリスト Ansible シニアセールススペシャリストの飯田敏樹氏
レッドハット株式会社 APACテクニカルセールススペシャリスト
Ansible シニアセールススペシャリスト 飯田敏樹氏

 レッドハットの中島倫明氏も、「コードを生成し、自動で復旧するような運用は既に実現できています」と語る。特にAnsibleはIBMのメインフレームにも対応しており、メインフレーム運用の自動化、ひいてはメインフレーム技術の継承にも貢献するだろう。

レッドハット テクニカルセールス本部 クラウドソリューションアーキテクト部 ソリューションアーキテクト オートメーション&マネジメント・エキスパート 中島倫明氏
レッドハット株式会社 テクニカルセールス本部 クラウドソリューションアーキテクト部 ソリューションアーキテクト オートメーション&マネジメント・エキスパート 中島倫明氏

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HashiCorpがIBMに加わることによる、新たな進化とは

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この記事の著者

谷川 耕一(タニカワ コウイチ)

EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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