24時間運用のMSP拠点をあえて「リゾート地」に スカイ365が挑む、脱コスト削減のオフショア戦略
初の海外拠点、「日本品質」をベトナム・ニャチャンで実現へ
「AIOps×BPO」で描く未来──新たなモデルケースの創出となるか
スカイ365ベトナムセンターは、BeeXのグローバル戦略における重要な拠点と位置づけられている。同センターでは、事業開始から1年後には24時間365日対応ができるようにエンジニア体制を拡充。まずは10名ほどの規模にまで、早急に体制を拡大したいと藤岡氏は述べる。
スカイ365が培ってきたMSPのノウハウを活かし、専門的なBPO業務を低コストかつ高品質に展開。SAPシステムの運用保守では、監視やバッチ処理、ユーザー管理、日常的なオペレーションの代行など、SAP ERPからSAP S/4HANA移行後も残る、運用タスクに対応することとなる。
BeeXグループでは、スカイ365ベトナムセンター開設を契機に「AIOps」を組み合わせたBPO体制を確立することで、新たな価値を創造することを目指す。まずはアウトソーシングから着手し、AI活用(AIOps)による問い合わせデータの分析、FAQチャットボットの導入、インシデントの自動切り分けといった高効率なヘルプデスク、運用タスクの自動化を実現していく。
最終的には、IT領域で確立したこのビジネスモデルを経理、人事、総務、ITサポートなどの「バックオフィスBPO(BPaaS)」といった広範なビジネス領域へと展開することも視野に入っている。スカイ365ベトナムセンターは、「こうした高度化・広範化するIT運用サービスの提供における、BeeXグループのグローバル戦略を支える重要な柱となる」とBeeX 代表取締役社長の広木太氏は話す。
もちろん、ベトナムにおけるオフショア人材のコストが安価にあり続けるわけではないだろう。技術力が高まり、高度な対応ができるようになれば、コストも上昇するはずだ。それまでにスカイ365は、ニャチャンで存在感を示さなければならない。
一方で、視点を日本国内に向けると社会課題も浮き彫りになる。昨今、日本国内のベトナム人技能実習生については、低賃金や長時間労働などの過酷な労働環境、孤立、職場や監理団体からの不当な扱いなどの人間関係の問題、制度設計の課題などもあり、失踪や不法滞在、さらには犯罪につながる悪循環が発生しているように見える。
ベトナム人技能実習生の本来の目的は、日本の優れた技能・技術・知識を習得し、帰国後に「母国の経済発展に貢献する」ことだ。安価な労働力とするのではなく、日本で習得した技術を地元で生かせる場を提供する。それは単なる社会貢献に留まらない。スタッフが地元で家族と暮らしながら、高いモチベーションで長く働き続けられる環境を作ることこそが、結果としてサービスの品質安定と顧客満足に直結するからだ。スカイ365の取り組みが、その「三方よし」のモデルケースになることを期待したい。
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谷川 耕一(タニカワ コウイチ)
EnterpriseZine/DB Online チーフキュレーターかつてAI、エキスパートシステムが流行っていたころに、開発エンジニアとしてIT業界に。その後UNIXの専門雑誌の編集者を経て、外資系ソフトウェアベンダーの製品マーケティング、広告、広報などの業務を経験。現在はフリーランスのITジャーナリスト...
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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