PoCでは「70%~90%の工数削減」効果を確認
みずほ証券におけるDevinの導入プロセスは、ULSコンサルティングの技術支援の下、実際のシステム開発業務に即した実証(PoC)を行うところからスタートした。検証のためのユースケースとして選定されたのは、主に既存システムのコードを改修する際の影響調査やテストコードの作成、データベースの仕様変更にともなうリファクタリング作業などだった。
実際にこれらの作業にDevinを適用してみた結果、特定の領域において人間のエンジニアよりはるかに短い時間で作業をこなせることがわかった。特に既存コードから改修の影響範囲を特定する作業や、膨大なパターンのテストコードを記述するタスクにおいて大幅な時間短縮が確認されたという。
この検証作業の成果について、竹田氏は次のように語る。
「データベースの桁数を増やしたり、区分値を追加したりする際の影響調査などにおいて、Devinは非常に高い効果を発揮しています。これまで手作業で1週間かかっていた影響調査が、わずか1日で完了してしまうほどのインパクトがありました。今回検証を行ったユースケース全体としては、70%から90%の工数削減効果を確認できています」(竹田氏)

実際に作業を実施した現場担当者からの評価も高く、担当エンジニアを対象に実施したアンケートでは、5点満点中4.5点以上の高い評価が多数を占めた。こうして同社の開発部門内では、Devinを開発チームの一員として前向きに迎え入れる土壌が着実に形成されていったという。
一方で、まったく新しいシステムをゼロから構築するようなケースにおいては、既存システム全体のコンテキスト、金融特有の業務要件をAIに正確に伝えるため、多くの手間を要することが予想された。そこで当面の間はDevinではなく、従来通り人間のエンジニアが作業を行っている。
このように同社では、PoCによる効果も踏まえながら、Devinが得意とする領域と不得意な領域を明確に切り分けた上で、実業務への適用範囲を戦略的に定めていく方針を固めた。
将来的には「フルスタックのAI駆動開発」実現を目指す
こうした成果の一方で、Devin導入時に金融機関特有の厳格なセキュリティ要件をクリアするために、一定の手間と時間を要したという。石村氏を中心に、クラウド環境を安全に利用するための物理的なネットワーク構成、厳密なアクセス制御の仕組みについて、情報セキュリティ部門も交えて長期間にわたる徹底的な議論が重ねられたという。
「SaaSを安全に利用していくための物理構成や、ネットワークのどこを通してどこを遮断するかという設計に最も苦心しました。最初のセキュリティ基盤を作り上げるまでに、情報セキュリティ部門と約1年間にわたる議論と準備を要しました」(石村氏)
具体的には、想定される情報漏洩リスクを網羅的に洗い出し、それらに対するネットワークの論理的分離や監査ログの常時監視といった技術的対策を一つひとつ実装していった。その結果、厳格なセキュリティ要件をクリアしながら、Devinを自由度高く利用できる環境を構築することができたという。特に開発プラットフォームとして、GitHub Enterprise Cloudを先行導入していたことも、GitHub環境が必要なDevinを導入する上でプラスに働いたとする。
こうした検証作業とセキュリティ基盤の整備を経て、みずほ証券はいよいよ2026年4月よりDevinの本格的な社内展開を開始した。既に杉谷氏は、システム開発プロセス全体をAI駆動型へと完全にトランスフォーメーションするプランを思い描いている。
「最終的には上流工程からテスト工程に至るまで、フルスタックのAI駆動開発を実現させたいと考えています。その中でもDevinは、プログラミングや単体テストの作業を担うことになると思います。そのほかの工程については他のAIツールを適材適所で適用しながら、複数ツールを組み合わせながら、国内におけるAI駆動開発プロセスのモデルケースを確立したいですね」(杉谷氏)

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吉村 哲樹(ヨシムラ テツキ)
早稲田大学政治経済学部卒業後、メーカー系システムインテグレーターにてソフトウェア開発に従事。その後、外資系ソフトウェアベンダーでコンサルタント、IT系Webメディアで編集者を務めた後、現在はフリーライターとして活動中。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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