正式契約にはなかった追加開発の費用を巡って紛争に
東京地方裁判所 平成25年9月30日判[事件番号 平成23(ワ)38235]
あるユーザ企業のECサイト構築システムの開発を受注した元請ベンダが、その作業を下請ベンダに依頼した。下請ベンダはこれを受けてシステム開発を進めていたが、開発途中からユーザの要望への対応や当初仕様に含まれていなかった機能の追加実装を求められるようになった。下請ベンダはこれらの作業を実施し、その後、当初契約の残代金に加えて追加開発費用の支払いを請求した。しかし元請ベンダは、追加開発について契約は成立していないとして支払いを拒否したため、下請ベンダが代金の支払いを求めて提訴した。
出典:一般社団法人ソフトウェア情報センター システム開発紛争判例研究会『判例で読み解くシステム開発紛争』
この事件では、追加開発について契約書が作成されていなかったにもかかわらず、受注者が追加開発費用を請求できるかどうかが問題となりました。
受注者である下請ベンダは、「ユーザから出た要望への対応や、当初仕様に含まれていなかった機能の実装は、元請ベンダからの依頼に基づき実施した追加作業であり、その対価を支払う契約も存在していた」と主張しました。また、その根拠として、追加作業の内容や工数を管理した各種資料、見積書、両者のやり取りなどを示しました。
これに対し元請ベンダは、「追加開発について正式な契約は成立しておらず、追加費用を支払う義務はない」と反論しています。
なお、この元請と下請は、追加開発について契約書こそ取り交わしていませんでしたが、ユーザから寄せられた要望について、それが当初見積の範囲内か範囲外かを整理し、要望管理一覧表、追加作業一覧表、および見積書などは作成していました。とはいえ、これらは契約のエビデンスとなり得るのでしょうか。たしかに、こうした書類で作業内容や費用などは明確になりますが、両者が同意したことを含めて、契約がたしかに存在したとまで言えるものなのでしょうか。判決の続きを見てみましょう。
東京地方裁判所 平成25年9月30日判決[事件番号 平成23(ワ)38235]
本件要望管理一覧表のうち、『見積想定』欄に『外』と記載され、対応済みとなっている要望項目については、本件個別契約の範囲外の追加開発であるとの認識を共有していたものと認められる。
(中略)
(要望管理一覧表、追加作業一覧表などは)下請ベンダと元請ベンダとの間で、追加作業であることを前提に実施すべき作業内容を協議の上取り決め、その内容を下請ベンダにおいて書面化し、かつ元請ベンダが承諾したものに当たる。
出典:一般社団法人ソフトウェア情報センター システム開発紛争判例研究会『判例で読み解くシステム開発紛争』
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- この記事の著者
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細川義洋(ホソカワヨシヒロ)
ITプロセスコンサルタント
経済産業省デジタル統括アドバイザー兼最高情報セキュリティアドバイザ
元東京地方裁判所 民事調停委員 IT専門委員
筑波大学大学院修了(法学修士)日本電気ソフトウェア㈱ (現 NECソリューションイノベータ㈱)にて金融業向け情報システム及びネットワークシステム...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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