権限・承認・ログでAIを同僚に IFSが示した新たなポートフォリオ
IFS Intelligenceは、IFSや他社のシステムをまたぎながらデータを読み解くことで、自然言語による問いに答えるだけでなく、企業が定めたルールと権限の範囲内でアクションを実行するような新製品だ。とはいえ、単体の新機能というより、昨年から提供してきたデジタルワーカーなども取り込み、IFSのAI機能を1つの入り口から使えるように統合したものといえる。具体的には、AIへの任せ方に応じて「Cowork」「Loops」「Runway」という3つの使い方が用意されている。人がAIと対話しながら業務を進める、AIに業務そのものを任せる、AIにシステムの拡張・移行を手伝わせる、という使い分けだ。
AIによるサポートを主とした「Cowork」では、経費精算や勤怠登録といった日常的な作業から、複数のシステムにまたがるデータを使った分析や資料作成まで、対話形式で依頼できる。IFSのグローバルCTOであるヴァイブス・クマール氏によれば、IFS Intelligenceは顧客ごとにカスタマイズが施されたIFSのシステムを30分以内にスキャンし、どのデータが何を意味し、互いにどう関係しているのかを把握するという。また、AIの回答を「Lens」として保存しておけば、最新のデータにあわせて自動更新されるダッシュボードのように使える。一度うまくいった作業手順は「Skill」として登録でき、他の社員も同じ作業を簡単に繰り返せるとした。
「Loops」では、作業依頼の受付や部品の調達、請求書処理といった定型業務を、デジタルワーカーが自動的にこなす。複数のデジタルワーカーが“クルー”としてチームを組んで連携し、判断や承認が必要な場面では人に委ねる仕組みだ。業務の手順書を読み込んでデジタルワーカーを生成する「Agent Studio」も用意され、約150の定義済みスキルを組み合わせて自社専用のエージェントを作れる。
IT部門やパートナー向けの「Runway」は、自然言語の要件から仕様書とコードを生成し、IFSの移行・拡張をサポートする。今後数ヵ月のうちに、エージェントが設定から受け入れテスト、データ移行のスクリプト作成までを担えるよう機能追加される予定だ。
そして、これらの機能群を支えるのが「Industrial AI Harness」である。AIハーネスとは、モデルの動作を制御する実行基盤のことを指している。ホール氏は、「人もデジタルワーカーも、データに触れる前に必ずハーネスを通過する。最後に監査証跡があれば何が起きても大丈夫、という発想ではいけない」と説明した。
まず、エージェントが扱える範囲は、利用する社員の権限と一致する。社員が閲覧できない情報はAIも閲覧できず、社員に許されていない操作はAIも実行できない。また、基幹システムのデータを書き換える操作には、人の承認が必要となる。一度実行してしまえば、簡単には取り消せない操作もあるためだ。さらに、AIがどのシステムにアクセスし、何を判断したかもすべて記録される。データについてはIFS Cloudを基盤として、生データを外部のAIプロバイダーに送らない仕組みだ。
モデルの選択についても明確な方針がある。クマール氏は、「導入時には、われわれが認定したモデルの中から選んでもらう。ただし、どのようなモデルでも自由に使えるようにはしない。製品の品質を保証するためだ」と説明する。認定モデルには複数の選択肢があり、たとえば中国製のオープンソースモデルを避けたい米国企業や、米国製モデルの提供停止を懸念する欧州企業など、地域ごとの事情にも対応できるという。一方、外部システムとの接続については開放的だ。ユーザーは自社で使っている他システムのMCPを持ち込み、IFS Intelligenceと連携させることもできる。講演中に映し出されたLoopsのデモ画面では、デジタルワーカーがSalesforceやSharePointから情報を読み取り、Teamsで人に判断を仰ぐ様子が示された。オープン性とガバナンスを両立させる設計だ。
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岡本 拓也(編集部)(オカモト タクヤ)
1993年福岡県生まれ。京都外国語大学イタリア語学科卒業。ニュースサイトの編集、システム開発、ライターなどを経験し、2020年株式会社翔泳社に入社。ITリーダー向け専門メディア『EnterpriseZine』の編集・企画・運営に携わる。2023年4月、EnterpriseZine編集長就任。
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