クラウドサービスの癖を知る
システムの連携や統合は、ERPの市場が立ち上がってきたころから盛んに行われるようになった。その結果として、様々な連携ツールも登場する。従来はERPを中心に連携や統合を行う場合は、企業内にあるシステムが対象だった。しかしながらここ最近は、企業システムがクラウドコンピューティングに徐々に移行している状況もあり、クラウドコンピューティングの環境もシステム連携や統合の対象となりつつある。
クラウドでもプライベートクラウドであれば、従来のオンプレミスのシステムとそれほど大きな差はない。そのため、これまでに企業内のシステムを連携、統合していた技術の延長線上で考えればいい。ところがこれにパブリッククラウドが入ってくると、非常に高度になってくる。パブリッククラウドの代表はセールスフォース・ドットコムなどが提供する SaaS である。また、Windows Azure、Google App Engine、Amazon EC2および前出のセールスフォース・ドットコムが提供するForce.com のようなPaaS もある。
これらのサービスは、同じようにクラウドと呼ばれてはいるが、当然ながら全く異なるものだ。SaaSであれば、基本的にはWebサービスの標準に準拠したAPIなりのアクセス方法を提供しているので、SOAP(Simple Object Access Protocol)などを用いればシステム連携は可能だ。また、PaaS 環境であれば、SQLやデータバスなどの連携方法が提供されている。しかし、サービスごとに「癖」があり、標準に準拠しているからと言って何らかのカスタマイズなしに、同じように連携できるものではない。
とは言うものの、単純にデータだけをシステム間で受け渡したいだけならば、さほど大きなカスタマイズは必要ないかもしれない。しかし、性能、信頼性、サイジングなど、本来企業システムの運用で必要となる要件を、きっちりと満たそうとすれば、それなりのカスタマイズが発生する。そして、要求を満たすために様々な手を尽くしたとしても、最後はそれぞれのサービスが表明している機能や性能のサービスレベル保証の部分を信じなければならないという課題も残る。パブリッククラウドを利用している場合には、そのサービスが保証していること以上を要求しても、実現できないこともあるのだ。(次ページへ続く)