クラウド化が進むとデータセンターのエネルギー消費量が増える
リーマンショック以降の厳しい経済状況が、むしろ追い風となりクラウドコンピューティングに注目が集まっている。企業は常にスリム化を意識し、「持たざるIT」が加速。ITに本当にメリットがあるかを追求する時代に突入している。つまり、これからの企業のITに対する考え方の変化に応える1つの有力な方法が、クラウドコンピューティングというわけだ。
クラウドコンピューティングは、技術論に陥りやすい。しかしながら「クラウドとは技術ではなくビジネスモデル」と言うのは、日本電気プラットフォームマーケティング戦略本部 グループマネージャーの泓 宏優氏だ。クラウドコンピューティングは、ネットワークを介し多様な端末からITを利用できるサービスで、その実現技術自体は、これまでのWebベースシステムを構築する技術と何ら変わるものではない。
異なるのはIT 資産を持たない、すぐに始められ失敗したらすぐに止められる、といったサービス形態を可能にするビジネスモデルだと泓氏は説明する。
NECでは「C&C クラウド戦略」を掲げ、クラウドサービスに積極的に参入している。その目的は「IT やネットワークの世界を発展させ、広く社会・個人・企業活動に貢献するクラウドの構築・提供を目指す」というものだ。また、NEC グループでは、人に地球にやさしい情報社会に向けて目標を掲げており、人のためには、(1)いつでも、どこでも、誰でもクラウドを安全かつ便利に利用できるようにし、個人・企業の活動を支援する。また、地球のためには、(2)「Green of IT」で、企業のクラウド化を進めCO2 排出量を削減する活動を行う。(3)「Green by IT」では、IT を活用し社会基盤をインテリジェント化し、社会全体のグリーン化に寄与する、としている。
すでに、NEC 自身によるクラウド化は進行しており、現在世界中のNECグループ14万人の従業員が、自社のクラウドコンピューティングを利用している。それにより、様々な成果も上がっている。「クラウドという言葉をマーケティング的に使うだけでなく、自らがモルモットとなりその効果を実証し、その上で顧客に提供します」と泓氏。クラウドの効果は、経営のスピードアップ、連結業績の見える化の促進などとして現れている。さらに具体的な省エネルギー効果として、データセンターのエネルギー効率を示す指標であるPUE(Power Usage Effectiveness)値が1.9 から1.6 にまで下がり、近々1.4 になる目処がついているとのことだ。一般的なデータセンターのPUE値が2.0から3.0の間にあることを考えると、NECのクラウド化による省エネ効果はかなり大きいと言えるだろう。(次ページへ続く)