パイロット導入の重要性
企業がスマートフォンを導入する場合、情報システム部門に丸投げで一気に導入する事例があるのだが、それは決してお薦めできない。
自社でスマートフォンをどのように活用するのか、具体的な活用シーンはどういったときなのか、その効果はどうか、といったことを一通り検証するべきだ。
また、スマートフォンにどのようなアプリケーションを入れるのか、プレゼンテーション資料や携帯すべき資料を入れるのであれば、どの資料を入れるのか、その資料はどういったアプリケーションに持たせるのか、といったことも最初から決めづらい。他社で使っているから、という理由で安易に決めてしまうと、導入後に社員が使いこなせない、あるいは使わないといったことが起きかねないのだ。
導入を決めるのは情報システム部門ではない
iPadのようなスマートデバイスを導入する際に、情報システム部門に丸投げする企業は少なくない。たしかに導入後の資産管理や遠隔監視といったことは情報システム部門にお願いすることになるわけだが、そもそも何に使うのか、どういうシーンで活用できるのか、といったことを考えるのは、ビジネスを司る部門であるはずだ。マーケティング部門なのか、あるいは営業部門なのか、利用シーンによって責任部門が変わるはずであり、それが決まったら情報システム部門に運用について相談する、という流れになるべきなのだ。
しかし、多くの企業は情報システム部門に丸投げしてしまい、セキュリティポリシーも含めて経営者すら関わっていないことが多い。セキュリティポリシーは企業のポリシーそのものと言っても過言ではない。それに経営者が関わろうとしないのでは、企業としての動きそのものが不安になるのではないだろうか。
自由に使っていいと言われても、社員は使えない
私が今まで携わってきた企業で、最も社員が困るアナウンスは「自由に使っていいよ」だ。会社支給の端末であるにもかかわらず、そしてPCにはいろいろな制限がかかっているのに、スマートデバイスだけは「自由に」と言われても理解しづらい。何かトラブルがあれば、後出しジャンケンで叱られる、と考えるのが普通だろう。
仮にアプリケーションを自由に購入していい、というルールを作るにしても、どのようなアプリケーションが自社の活動に向いているのか、くらいの情報は提供するべきだ。メモを録るならこのアプリケーション、プレゼンテーションにはこのアプリケーションといった具合だ。また、GoodReaderのように便利なアプリケーションは、アプリケーション連携が出来るため、企業によっては善し悪しである。iPadから取り出せないようにしておきたい資料を格納するには不安だ。こういうことも事前に検討し、確定しておかなくてはならないところだ。こういった責任を社員に丸投げしてはいけない、ということなのだ。ここはしっかり運用ポリシーを決めて、これはいいが、これはダメ、といったことをはっきりさせておくことで、社員は安心して活用することができるのだ。