全社統一からの離脱
さて、こうなってくると頭を悩ませるのは情報システム部門だ。全社で同じ端末を持ってもらうほうが、運用がラクであり、セキュリティポリシーも整理しやすい。ところが、ある社員は外部からPCでアクセスし、ある社員はスマートフォン、また別の社員はiPadのようなタブレット端末を利用しているとなると、様々なセキュリティを検討しなくてはならないし、サポートも容易ではない。しかし、企業全体で考えると、そのほうがいい、という判断もあるのだ。その場合にどうするべきだろうか。以前書いたBYOD(個人端末の企業内での利用)の場合もそうだ。社員全員が同じ端末を持っているとは限らないのだ。
こう考えた場合、既に「全社統一」の端末を持つ時代ではなくなってきている。ある社員はWindowsPCで、デザインに関わる社員はMac、営業に出る社員はiPadでプレゼンを行ない、社内に戻ってくればWindowsPCで資料を作成する。マーケティング部門の社員はAndroid端末を持ち、マーケティング施策に利用する。管理職は報告書をWindowsPhoneで確認し、部下に返信する。
どの端末がよくて、どの端末が悪いという話ではない。利用する部門のスタイル、職種、社員にとっての使いやすさで変わることで、企業全体の業績、効率に役立てばいいだけのことだ。そこを受け入れることが、これからの企業にとって必修課題になってくることは明らかだと考えている。
プロに任せる
10回に渡って、企業のスマートフォン導入について書いてきた。最終回に、アウトソーシングの使い方について整理しておきたい。
企業規模にもよるが、大抵は出入りのシステム会社と付き合いがある。その企業のお医者さんみたいな位置づけで、PC、サーバといったハードウェアから、社内で使う業務システムの導入、カスタマイズ、運用などを一手に引き受けているか、あるいは複数のシステム会社で担当している。
企業の情報システム部門とも緊密に仕事をしているため、スマートフォンの導入も彼らに相談したくなる。しかし、そのシステム会社がスマートフォンに精通しているとは限らない。むしろ、スマートフォン導入は彼らにとって売上に貢献しない可能性が高い。
また、協力してくれるシステム会社だとしても、導入プロセス全てを担当できなくて困っている話を聴くことが多い。
そういう意味では、スマートフォン導入のプロフェッショナルは、日本にはまだまだ少ない。イシン株式会社にも、多くのシステム会社から相談が来ているが、その多くは皆さんも名前をご存じだと思う有名なシステム開発企業だ。
今月15日、16日に、アップルジャパンでiPad企業導入に関するセミナーを行なったが、ここにも多くのシステム会社が参加され、我々にご相談に来られていた。そういう話の延長で、実際にプロジェクトになり始めているものもある。
スマートフォン導入プロセスは、必ずしもITだけではない。データの仕分け、業務フローの見直し、営業部員の働き方や管理職の評価体型にまで関わることもある。こうなるとシステム会社の領域からは大きくかけ離れる。そういったところまでサポートできるスマートフォン導入支援企業、そして精通したメンバーを選定し、そういうプロフェッショナルに任せることで、スムーズなスマートフォン導入が可能になる。
イシン株式会社には、月額9,800円からのスマートフォン・コンシェルジュ(通称スマコン)がある。こういうサービスを利用し、社内リソースで導入する方法も考えられるのではないだろうか。
今後ますますニーズが増えていくことであり、企業として避けて通れないところだ。ぜひ、トラブルのないスムーズな導入ができるように、そしてそこにこの連載が少しでも役立てば幸いと考えている。