1. SQL Serverのスレッドスケジューリング
ご存じの方も多いと思いますが、SQL Serverはノンプリエンプティブなスレッドスケジューリングの仕組みを実装しています。ノンプリエンプティブなスレッドスケジューリングとは、スレッドがCPUを使用する時間(スレッドの切り替えタイミング)をOSではなくプログラムが決定することを言います。SQL Serverは、ハードウェアキャッシュの有効活用、リソースガバナーを使用した正確なリソース制御の実現など、SQL Serverにとって最適なスレッドスケジューリングの仕組みを自ら実装しているのです。
今回は、このようなSQL Serverのスレッドスケジューリングがどのように実装されているか探っていきたいと思います。ノンプリエンプティブなプログラムがどのようなものかを理解することはそれほど難しくありませんが、具体的な実装となると意外とイメージしにくいのではないかと思います。
題材として、今回はSQL Serverのスレッドスケジューリングを真似たサンプルプログラムを作成してみました。作成当初は、SQL Serverの実装に似せるためC++で書いていたのですが、敷居を低くするためC#で書き直しています。もちろん、SQL Serverのスケジューラーはこのサンプルコードのように単純ではなく、より複雑なアルゴリズムが実装されています。
このサンプルコードに沿って解説を行っていきますが、紙面の都合上サンプルコードの細かい説明は割愛しますのでご了承ください。サンプルコードはこちらからダウンロードできます。
<サンプルコードのプロジェクト構成>
サンプルプログラムは、Visual Studio 2010+.NET Framework 4.0で作成しています。サンプルコードのプロジェクト構成は以下の通りです。
Schedulerプロジェクト
SQL Serverのスケジューラーを真似たノンプリエンプティブなスレッドスケジューリングを行うライブラリ (Scheduler.dll) を作成します。簡潔さのため、スケジューラーのインスタンスは1つしか存在しないようにしています(OSクラスのBootメソッドを参照のこと)。
SchedTestLibプロジェクト
テスト用のプロジェクトです。Scheduler.dllを使用して、SQL Serverで発生するいろいろなケースをシミュレーションするライブラリ (SchedTestLib.dll) を作成します。
LearningSchedUIプロジェクト
SchedTestLibに実装されているテストシナリオを実行し、Scheduler.dllやSchedTestLib.dlが出力するメッセージを画面に表示するWindowsアプリケーション (LearningSchedUI.exe)を作成します。
LearningSchedプロジェクト
SchedTestLibに実装されているテストシナリオを実行し、Scheduler.dllやSchedTestLib.dlが出力するメッセージをコンソールに表示するコンソールアプリケーション(LearningSched.exe)を作成します。