Oracleのエンジニアドシステムは顧客のシンプルなものをと言う要求から生まれた
「20年以上にわたって利用しているITシステムを、革新的なものにしてくれ」とCEOは言う。一方のCFOは「もうお金がないので予算は現状維持かカットする」。とはいえ、データは増加し続けているし、企業としては業界のイノベーションにもチャレンジしなければならない。CIOはこれらの課題をどう解決すればいいかに、大いに頭を悩ませることになる・・・
ハード氏は、これらを同時に解決できるのが、Oracleの提供するインフラからアプリケーションまで揃っている完全なるITシステムのスタックだと言う。インフラからアプリケーションまですべて揃っているのはOracleだけ。このことが、なぜOracleなら可能かの理由だとのこと。
そして、エンジニアドシステムは、顧客からの「よりシンプルなものが欲しいという要求に応えるものだ」と言う。シンプルな上にパフォーマンスが高いのがエンジニアドシステム。このパフォーマンスが高いということは極めて重要であり、100倍性能がアップすれば結果的にコストも大きく下がることになる。これは、速ければサーバーやストレージの数を減らすことができ、電力消費や管理コストも下がるからだ。
この、従来より100倍速いということについては、ハード氏も最初は信じられなかったという。100%の性能向上、つまりは倍になったのではと聞き返したくらいだとか。ところが、実際に100倍の性能改善を成し遂げているワークロードの例はいくつもあるし、そこからさらに20倍、30倍という性能改善も見込めるのだとか。
さらには、最大で10倍のデータ圧縮技術があり、このことはテラバイト単位で8000から1万ドルも支払っているストレージのコストをより大きく削減することに貢献する。この圧縮とIn-Memoryの技術を合わせることで、効率性はさらに向上するとハード氏。これを実現するために50億ドル以上の研究開発投資をしており、世界中の数万人規模の技術者が、日々革新をもたらすための開発を行っているとのこと。ハード氏は「ここまでできるのはOracleだけだ」と豪語する。
Exadata X3のキモは書き込みも高速化したフラッシュキャッシュの活用だ
ハード氏のあとを引き継いで、昨日エリソン氏が紹介したOracle Exadataの新しいバージョンについて説明したのは、システム・テクノロジー担当シニア・バイスプレジデントのホアン・R・ルイーザ氏。Exadataは、サーバーだけでなくストレージも含め、ベストなスケールアウト型アーキテクチャをExadataという1つの箱の中で実現したものとのこと。この中でも重要なのがネットワークであり、これはユニファイドネットワークでサーバーもストレージも同じInfiniBandで接続されている。
従来、このスケールアウト型の仕組みを実現しようとすると、大きな手間とコストがかかった。それに対してフルスタックを持つOracleが自ら組み上げることで、最適なものを選択し均質なものを提供できるようになった。このExadataは、Oracleのクラウドサービスのインフラで利用しているものと同じものだ。そして、「Exadataのいいところは、外から見るとたんなるデータベースに見えるところだ」とルイーザ氏は指摘する。このたんなるデータベースで、特別なものに見えないからこそシンプルに管理できることにつながる。
もう1つのExadataのポイントは、フラッシュメモリの活用だ。フラッシュメモリは第一世代ではSSDと呼ばれディスクドライブの替わりとして活躍する。たんなるディスクに見えるので、アプリケーションやデータベースなどからはそのままディスクの替わりとして使える。現在は、フラッシュメモリ活用の第二世代に入っており、よりCPUのそばでキャッシュメモリとして活用できるようになっている。今回のX3では、このフラッシュメモリを大量に搭載し、さらにここに新たな革新を加えた。
ちなみに、Exadata新版の正式名称は「Oracle Exadata X3 Database In-Memory Machine」と言う。メモリを最大限に活用することが名称にも表れているのだ。Exadataに対しデータウェアハウス製品のベンダーはデータウェアハウスに向かないと言い、OLTPを提供するところはデータウェアハウス向けでOLTPはできないのではと言う。現在までにExadataは1000台以上を出荷しており、その用途はデータウェアハウスとOLTPはほぼ半々だとのこと。「どちらのベンダーの言い分も間違っていることを照明している」とルイーザ氏。
そして、OLTPの事例として紹介したのがPayPal。世界規模で金融業界を変革している企業だと紹介され、同社はペタバイト規模の極めて大きなOLTPトランザクションを抱えていたとのこと。そのトランザクションをExadataに移行して、100ミリ秒以下で処理できるようになったとのこと。このような勘定系などのOLTP系の処理では、書き込みの処理が速くならないと大幅な高速化は望めない。今回のX3では、フラッシュキャッシュでの書き込み処理の高速化を行ったとのこと。これにより、書き込みの処理が発生するようなシミュレーションも高速に処理できるようになり、それが意思決定の迅速化にもつながる。この書き込み処理の高速化は、ソフトウェアで実現している技術なので、既存のX2であっても適用可能だ。
今回のX3では、メモリ空間が大幅に広がりIn-Memory Databaseになったことが注目されがちだが、このフラッシュキャッシュでの書き込み処理性能の高速化は、既存のX2のユーザーを含め大きなメリットになりそうだ。